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112.同じ目に

 レグルに対して喚く夫婦と突然現れた僕たちを見て怯える夫婦。2組の夫婦がいるけど、2組とも、僕とは無関係では無い夫婦になる。


 レグルに対して喚いている夫婦は、僕に対して笑みを浮かべながらナイフを突き刺して来た男、リーグの両親だ。ぎゃあぎゃあと喚いている。


 それとは反対に恐ろしいのか不安なのか黙り込んでいる夫婦はステラの両親だ。あぁ、懐かしいなぁ。本当に会えて良かったよ!


 僕があまりの嬉しさにローブの中で笑みを浮かべていると


「レグル! 早く私たちを避難させなさいよ! 誰のおかげであなたがギルドの中で優位な位置に居られると思っているのよ! リーグとステラがあなたのためにギルドに寄付してくれるからでしょ!」


 と、怒鳴り叫ぶリーグの母親。どうして、レグルがギルドの中でも受付員より上の調査員の位置にいるのか分からなかったけど、そういう事か。


 リーグとステラの両親には聖騎士、聖女を輩出した両親として、聖王国からお金が出るのだろう。それに、この町がダンジョンになったからか、ギルドを作るのに2人も寄付しているようだし。


 だが、まあ、今はそんな事はもう関係ない。いくら寄付しようが、いくらギルドに貢献しようが、もう関係ない。


 僕は4人の周りにゾンビたちを召喚する。一気に周りをゾンビに囲まれた4人は悲鳴をあげながら4人で固まる。その4人の前に僕は向かう。


「昔はあまり気にしなかったけど、かなりヒステリックなんだね、リーグのおばさん。おじさんも昔はこんな感じじゃなかったのに、大金が手に入って変わったのかな?」


 僕がくつくつと笑いながら言ってあげると、顔を赤くして怒鳴ってくる夫婦。でも、僕が誰か気が付いたようなわけではなさそうだ。ただ、腹が立ったから怒鳴っているって感じだ。


 その2人を見てミレーヌが今にも魔法を放ちそうだけど、僕のために我慢してくれている。


「まあまあ、そう怒らないでよ、おじさん、おばさん。折角の再会なんだからさ」


 僕がそう言いながらフードを取ると、初めは誰かわからなかったようだけど、次第に表情が変わっていく。


「な、なんで、あ、あなたが生きているのよ? し、死んだはずじゃあ」


「死んだとは酷いなぁ。みんなに会いたくて折角帰って来たのに。ほら、沢山お土産も持って帰って来たんだよ?」


 そう言うと同時に右足で地面をタンタンと叩く。すると、ゾンビたちの後ろに追加でスケルトンが姿を現した。それも、普通のスケルトンじゃなくて、特殊な力を持ったスケルトンだ。


 ジリジリと寄ってくるアンデッドたちに怯えながらも、僕を睨んでくるリーグの両親。ステラの両親は何を考えているのかわからないが、僕の顔を見て何故か安心した表情を浮かべている。意味がわからない。


「……まあ良い。兎に角ここから俺たちを出すんだ。今なら、町の人たちにも戻って来られるように俺たちが仲を持ってやる。だから、この化け物どもをどうにかしろ」


 何を思ってそう言う答えが出たのかわからないけど、リーグの父親がそんな事をのたまう。もう、我慢出来ずに笑い声を上げてしまった。その僕を見て不快そうに見るリーグの両親に向かってゾンビが進み始めた。


「僕が戻る? おかしな事を言うね。あんな事をされて僕がこのクソみたいな町に戻って来るとでも? ……ふざけた事を抜かすなよ? 思わず一捻りで殺したくなったじゃないか?」


 余りにもふざけた事を抜かす2人に思わず殺気を放ってしまった。そのせいで4人……いや、レグルを合わせた5人はその場に腰を抜かして座り込んでしまった。でも、まだ意識がある分、僕も理性は残っているようだ。


「わ、私たちもこ、殺すの? 昔は面倒を見てあげたじゃない?」


 そして、また変な事を言って来たのはステラの母親だった。……そうか、さっきの安心した表情を浮かべていたのは自分たちが助かると思っていたからか。なんて、あり得ない妄想を。


「当たり前じゃないか。僕がこの町に戻って来た理由はそれしかないよ?」


「ま、まさか、あの事を恨んでいるのか!? あ、あれは仕方なかったんだぞ? ああ、しなければ俺たちは全員殺されていた! 村のためにお前が犠牲になるのは当たり前じゃないか!」


「なら、この町を助けるためにあなたを殺すって言ったら、あなたは納得する? 目の前で大切な人を殺されても納得するのか? どうなんだよ?」


「……そ、それは」


「悪いけど、これ以上何か叫ぼうとも僕には響かないよ? あなたたちを殺す事は決定事項だからね」


「そ、そんな!? わ、私たちを殺せばステラが悲しむわよ? は、ハルトはステラの事が好きだったわよね? それでも良いの?」


「……それが? 僕にナイフを突き立てた女なんか今更どうでもいいんだけど?」


 心底そう思っているので、そう言ってあげると、ステラの両親は絶望に顔を染めていた。その僕の言葉に何故かミレーヌもダメージを受けていた。ああっ! ミレーヌは違うよ!? ミレーヌが僕にナイフを刺したのはあのクソ女神に操られて刺したのだから。


「まあ、これ以上話すつもりはないよ。でも、まだ殺さないでおいてあげるよ。2人の元に送らないといけないからね」


 僕はそれと同時に指を鳴らす。すると、さっきまで立っていたゾンビが歩みを始める。ジリジリと寄って来るゾンビを見て


「こ、殺さないって言ったのに!?」


 と、叫ぶリーグの母親。勿論殺さないよ? ただ、僕と同じ目にはあって貰うけどね。ゾンビが数体近付いて、リーグの母親へと噛み付く。


 リーグの母親は暴れるが、複数に乗り抑えられて叶うわけもなく、あちこちとゾンビに噛まれる。ただ、致命傷になる首や顔は噛まないように指示を出したおかげで、噛んだのは腕や足、脇腹などだ。


 それぞれ噛まれて悲鳴が部屋の中で鳴り響く中、その後ろで控えていたスケルトンたちが手に持つ杖を向けて魔法を放つ。すると、ゾンビたちに噛まれた傷痕が治っていった。


 このスケルトンたちは回復系の魔法を扱う事が出来るスケルトンメイジだ。これも、僕とミレーヌで作ったものになる。


 突然痛みが無くなった事と、ゾンビが噛むのをやめた事に涙を流しながら戸惑う2組の夫婦。


「あなたたちには自分たちの子供たちの元に辿り着くまで、あの時の僕と同じ目にはあって貰うよ。喚こうとも泣き叫ぼうとも止まない苦痛を味わうと良い」


 僕は自害しないように見張りのデュラハンを付けて部屋を後にする。ただ僕の後を怯えた表情でついて来るレグル。彼には悪魔の影(ドッペルゲンガー)を付けているから、僕には逆らえない。逆らったら殺すように言ってあるからね。


 部屋の中には苦痛による悲鳴が鳴り響いていた。そして、その日、町からは様々な悲鳴しか聞こえなかった。

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