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第7話:魔女の館へ


儂と黒猫のルディは街の中央に向かって歩いていた。


街の中央、つまりは城の近くにいくにつれて、視界に入る建物が大きくなっていく。


儂はある屋敷の前で立ち止まった。その屋敷は周りの家々より一際大きかった。かなりのお金持ち、または権力者が住んでいることが伺い知れた。


屋敷の周りには花壇が設置されており、色とりどりの花が咲いていた。


儂は屋敷の扉のまえに立ち止まり、ライオンの彫刻が施された扉ノッカーを叩いた。ライオンの彫刻はとても精密に作られており、今にも動き出しそうだった。


しばらく待ってみても反応がない。


「ご主人様、本当にこのお屋敷であっているんですか」


ルディが聞いてくる。


儂は仕方がないのでもう一度扉ノッカーを叩く。


・・・もう一度


・・・もう一度


・・・もう一度


「ああ、もううるさいね!」


さらに、扉ノッカーを叩こうと手を伸ばしたら、扉ノッカーのライオンが吠えた。


扉ノッカーのライオンが儂をじろりとにらみ、口を開く。


「何度も何度もうるさいね。・・・・・あんた、なんのようさ。わたしゃ忙しいんだよ」


おう、こわいこわい。


「ジョンと申します。師匠アルバート様の使いでまいりました。ヴァイオラ様にお願いがあってまいりました」


「アルバートが・・・・。あの引きこもりの偏屈爺が一体何のようだい。・・・・・まあいい、入っといで」


扉ノッカーのライオンがそういうと、カチリと鍵が開く音がなった。そして誰も押していないのに勝手に扉が内側に開いた。


屋敷の中にも扉を開けた人物など見当たらなかった。魔法で扉が勝手に開いたのだった。


「さてと行こうか」


「ご主人様。これからお会いになる人は誰なのでしょうか」


ルディが問いかける。


「宮廷魔術師ヴァイオラ。昔はよく魔術対決をした仲だよ」


「それって大丈夫なんですか」


「問題ないだろう、昔のことだしの」


儂とルディは屋敷の中に入ると、人の頭ほどの大きさの光の球が一つ宙に浮いているのが見えた。


儂とルディが近づいていくと、光の玉はゆらりと揺れて屋敷の奥へ進んでいく。そしてある程度儂と距離が離れると、ゆらゆらとその場で浮かんで止まっていた。


ついて来いということか。


儂とルディは光の球に導かれるままに歩を進めた。


少し進んだ所で後ろの扉がバタンとしまった。ルディがビクリと後ろを振り返る。儂は気にせずにそのまま進む。


「待ってくださいよー」


光の玉に近づくと、また球はふわふわと揺れながら前を進む。光の球が閉まっている扉に近づくと勝手に開いた。儂たちはその扉をくぐるとバタンと閉まる。


くぐった先は廊下でいくつかの扉が並んでいた。光の球は廊下の奥にある扉を目指す。その扉をくぐると更に廊下だった。


いくつかの廊下をくぐりぬけると、光の球がある扉の前で止まった。儂たちが近づいても再び何処かに動こうとはせずにその場をゆらゆらと浮かんでいるだけだった。


この扉の先に目的の人物が居るのだろう。


「案内ご苦労様でした」


儂は丁寧な口調で頭を下げる。光の玉もそれにあわせて少し縦に揺れる。


儂が扉の前に経つと、やはり、ひとりでに開いた。


そこは執務室だった。床には絨毯がひかれていた。部屋の壁際には本棚が置かれ、本がびっしりと並んでいた。部屋の中央奥には机が置かれ、書類が山積みになっていた。


山積みになっている書類の隙間から、机の向こう側には老婆が座っているのが見えた。羽ペンを持ってせっせと書類になにか書いている。


その老婆の顔には多くのしわが刻み込まれ長い年月生きてきたことを感じさせた。丸いメガネをかけていた。羽ペンをもつ節くれだった各指には赤、青、緑、黄に輝く指輪が嵌められていた。


「ちょっと待っといてくれるかい」


老婆は顔を上げないまま、儂に声をかける。儂は首を縦に振る。こちらがいきなり押しかけてきたので多少待つのも仕方なかろう。


「よしっと」


老婆は一人つぶやくと羽ペンを置いて儂を見た。上から下までじーっと観察してくる。


「で、アルバートの使いだったか。確かにあんたからはあの爺さんの魔力を感じるね。それで、その使いが私に何かようなのかい。」


「アルバートの弟子、ジョンと申します。師匠の命によって王宮の図書館に入る必要があるのです。王宮に入るための紹介状を書いてもらえないでしょうか」


「そんなのお前さんの師匠に書いてもらえばいいじゃないか。」


「それが師匠が私に渡すのを忘れてしまって・・・・・。」


儂は困ってしまったというように顔をしかめる。


「ふん、あの爺さんがやりそうなことだ。で、あたしに何の得があるっていうんだい?」


「私の感謝の気持ちを」


儂は頭を下げて一礼をする。


「バカにするんじゃないよ。あんたみたいなひよっこに感謝されたってあたしにゃ何も嬉しくないよ。・・・・・ちょっと待ちな」


老婆は儂をじっと見据える。


「あんたからは確かにアルバートの魔力を感じる。弟子だというのだから、あいつの魔力を感じるのは不思議じゃない。だけどちょっとお前の魔力はあいつの魔力に似すぎている」


老婆は席から立つと、こちらに向かってきた。


「似ているどころじゃない。全くの一緒だね。あんた何ものだい」


老婆は鋭い目つきで儂を睨みつけてきた。

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