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第5話:魔物との遭遇

あらすじ

大魔法使いのアルバートは若返りの薬によって若返ることに成功する。しかしながら、副作用として魔力を消失してしまっていた。

魔力を取り戻す方法を調べるために、アルバートは王都の王立図書館に向かうことにする。

アルバートは魔法使いの弟子ジョンとして名乗りながら、王都に向かう馬車に乗っていた。


------


「ジョン様、起きてください」


馬車のなかで眠っていると、フレッドの声に起こされた。


若干フレッドの声に焦りが感じられた。


「フレッドよ、なにごとじゃ」


寝起きのために演技をすることを忘れてしまう。


フレッドはそんなことを気にした様子もなく答える。


「あれを見てもらえますか。」


フレッドは御者台に座ったまま、馬車の前方を指差す。


儂は馬車の荷台からのそのそと起き上がった。抱きかかえていた猫のルディは荷台に放り投げる。


ルディは「イタッ」という声をあげたが眠り続けた。


儂は荷台の前方に移動し、フレッドの指差す方向を見た。


馬車がたどる道を少し外れたところに、身長が140cmくらいで二足歩行で立つ人間のようなものが6体いた。薄緑色の肌をしており、薄汚いボロ布を腰に巻いていた。ゴブリンだった。


ゴブリンたちは手に剣を持っていた。何処かからかくすねてきたものだろう。


ニタニタと笑いながら馬車のほうを指差している。


「ゴブリンか。儂らを襲うつもりじゃな。」


「ええ、恐らく。ジョンさんなんとかなりますか」


フレッドは冷や汗を垂らして震えていた。ゴブリンなんて低級な魔物だが、一村人が相手するには厄介な魔物だろう。


「ルディ、起きろ」


ルディを足で軽く蹴り飛ばして起こしてやる。


「んんー、なんですか、ご主人様。あと痛いです。もう少しやさしく起こしてください。」


「こうでもせんと起きんだろう。お客さんがやってきたぞ。相手をしてやろう。」


ルディは儂の肩に飛び乗るとゴブリンたちを見た。


「なるほどー。私の出番というやつですか。」


うんうんとルディは頷く。


「そういうことだ。だからとっとと仕事をしろ」


「やれやれ。猫使いが荒いご主人様ですね。良いんですか、そんな偉そうな態度をとってしまって。今のご主人様ならゴブリン相手にも苦戦するんじゃないですか。私のご機嫌はとっといたほうが良いと思うんですけど」


「儂を愚弄するか。良かろう。お主はそこで見ておれ。フレッドよ。馬車を止めろ。」


「あっ、はい」


フレッドに馬車を止めされる。魔法の杖を持って儂は荷台から飛び降りた。戦闘の影響が出ないように馬車から少し距離を取る。


ゴブリンたちは馬車が立ち止まり、子供が降りてきたことを見てゲラゲラと笑いあった。ゴブリンたちは抜身の剣を引っさげてこちらに向かってくる。


儂は腰に身につけた巾着袋から魔石を取り出す。儂が魔石を握り締めると、魔石の魔力が感じられた。


「儂の前に立ちふさがろうなんて身の程知らずの下等生物め。」


魔石から魔力を取り込む。体中に魔力が満たされていく感覚が心地よい。魔力によって自分がなんでもできると思えるような全能感すら感じられる。


「貴様らなど灰になれ。」


儂は呪文を唱える。魔石から取り込んだ魔力は、魔法の杖の先端に集まり、炎の球として具象化される。


メラメラと燃える大きな炎の球がゴブリンたちに襲いかかる。


炎に飲み込まれたゴブリンは3体だった。燃えるゴブリンたちは叫び声を上げて地面に転がり回る。必死に消そうとするが炎の勢いは弱らずにゴブリンの命を削っていく。ゴブリンたちの声はだんだんと小さくなってく。あたりには焦げ臭い匂いが充満した。


無事だったゴブリンたちは仲間がやられたのをみてうろたえる素振りを見せた。先ほどまではニヤニヤと笑いながらこちらに向かってきたというのに、今では後ろを振り返って逃げ道を探しているようだった。


「今頃、襲っていはいけない相手だったと気がついたのか。」


儂は愚かなゴブリンたちを蹴散らすべく更に呪文を唱える。魔法の杖からはバチバチと音がしだし、紫電が空気中を走る。雷撃の魔法だ。


十分に魔法が練れたところで儂は杖を振り下ろす。青い雷撃が杖の先端から飛び出し、ゴブリンに向かった。


雷撃は二体のゴブリンに命中した。ゴブリンは叫び声を上げることもなく、体が引きつけをおこしその場に転がった。白目を向いて、ブルブルと体を震わせていた。


残った一体は仲間がやられるのを見ると、回れ右をして逃げ出した。手に持った剣も投げ捨てて全力疾走だった。


「ふん、臆病者め」


儂は逃げるゴブリンには追撃を加えずに、馬車に戻った。


「いやー、すごいですね。さすがアルバート様のお弟子様だ。私だけだったらゴブリンに襲われて死んでいるところでしたよ」


フレッドが賞賛の声を儂にかけてくる。


「いえ、そんなことないですよ」


儂は今更ながら少年の演技をしながら答える。


年をとっているせいか、寝起きはいつもぼけてしまう。


「いや、すごいですよ。もうかっこ良くてしびれちゃいました。」


フレッドは儂の態度が変わっていたことには触れずに褒めまくる。


「ははは。ありがとうございます。」


儂が荷台の乗り込むと馬車が再び動き出した。


儂は荷台に腰を落ち着けると、手に握りしめた魔石の魔力の残りの量を確認した。


残されている魔力は4/5 程度であった。手持ちの魔石は10個程度である。これからはもっと慎重に魔法を使わなければと胸に刻みこむ。


「ルディよ。これからはよろしく頼むぞ。」


使える魔力の量に限りがあるため、使い魔のルディの助けも必要だと改めて思う。


「なんですか、急に。」


「儂はお前の助けが必要なようじゃ」


じーっとルディは儂の様子を伺っていた。ぷいっと視線をそらすと言い放った。


「・・・・・・もう、そんなふうに真面目にされると照れくさいじゃないですか。任せてください。ご主人様」


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