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第12話:魔物の活性化

「行ったな」


「行きましたね」


 儂とルディは十分に王女さまが図書館から離れることを待ってから口を開いた。


「で、なんで王女さまに抱えられていたんだ」儂はルディに問いかけた。


「いやー、捕まってしまいまして」


「お前ならあの王女に捕まらなさそうだが」


「王女さまからは逃げてたんですけど、それで王女さまが泣いてしまって……」


 なるほど、ルディは優しいな。泣いていたから王女さまに捕まってあげたと――。エーン、エーンと泣く王女さまに、恐る恐る近づくルディ。そしてルディは慰めるように体をすり寄せて、王女さまに抱きしめられる。少しずつ泣き止む王女さま。うん、絵になるじゃないか。


「王女さまが泣き出したら、物陰からガタイのいい騎士が飛び出してきまして、ヤバイと思った瞬間には捕まっていました」


 思っていたのと違った。少し感動したのに。ルディを捕まえたのは王女さまの護衛の騎士だろう。


「そ、それは災難だったな」


「捕まったあとは王女様のペットのように扱われたので、美味しいものを食べれましたけど」


 ルディは口から唾液を滴らせながら言う。相当美味しいものを食べてきたらしい。


「ところで、なんで王女さまはお前をつれて図書館に入れたんだ」


 儂は疑問を口にする。図書館の入り口にはアルスター卿がいて、動物を入れることを拒むはずだ。


「アルスター卿はいませんでしたよ」


 儂は首をかしげる。


「お城の人たちが何やら忙しそうでしたからね。アルスター卿も別の仕事をしているのではないですか」


「なにかあるのか」


 儂は図書館に閉じこもっているせいで外からの情報が全く入ってこない。いつも儂が図書館に籠っている間は散歩しているはずのルディに聞く。色々と盗み聞きしているはずだ。


「なんでもアルバート様の自宅の周辺にいた魔物が活性化しているんですって。貴族たちが愚痴ってましたよ。『引き篭もりの老魔術師め、己の周りの土地の管理も出来ないのか。王から土地を下賜されていながら』って」


 儂は渋面を作る。確かに儂は過去の功績で古城、つまりは今の自宅を頂戴していた。さらには周辺の村々から貢物を毎年もらっていた。周辺の土地の管理する義務は儂にあると言われても仕方なかった。


 儂の周辺の村々は儂が結界の魔法を張っているので被害はまだ出ていないだろうが、結界を維持している魔石の魔力が無くなってしまえばまずいことになるだろう。


 急いで魔力回復の方法を見つけなければなるまい。時間がかかるようならば、ヴァイオラに結界の魔力の補充をしてもらう必要があるかもしれない。更に借りを作ることはできれば避けたいのだが……


 しかし、なぜ魔物が活性化しているのだろうか。儂という存在がいなくなったことを魔物たちが気づいて暴れているというのだろうか。儂は、魔力が莫大にあった時は常に魔力を発散して、自宅周辺の魔物たちを威嚇していた。いってみれば、儂の周辺の土地は儂のものだと魔物たちに常に主張しているものだった。それが無くなったというのだ。儂という脅威がいなくなった土地の縄張り争いを魔物たちはしているのかもしれない。


 それとも別の理由があるのだろうか――


 儂が魔物たちが活性化している理由を考えていると、ガシャガシャと歩く足音が聞こえた。


「何やっているんですか!こんな所に猫なんて連れて来て」デレクがやって来た。


「まったく魔物たちが暴れているっていう情報が入ってきて、こっちは忙しいっていうのに……。いたずらしてはいけませんよ」


 デレクはガシャガシャとこちらにやってくるとルディをひょいっとルディを両手で抱きかかえる。ルディを抱きかかえた瞬間、若干顔がほころんでいるのは気のせいか。


「可愛い」とデレクがつぶやくのが聞こえた。バタバタとルディは暴れる。頑張って抜けだしてくれ。


「猫ちゃんは私が外で預かっておきます。それとバイオラ様がジョンさんを呼んでいましたよ。なんでも魔物退治の準備をするから手伝ってほしいとか。詳しいことを説明するから研究室に来てほしいと」とデレクが言った。


 場所はわかりますかとデレクが聞いてきたので、儂は首を横にふった。儂は普段ヴァイオラの家とこの図書館を往復するくらいで、王城を探索していない。王城の構造がどうなっているのか儂は全く知らなかった。


「場所がわからないので案内してもらえますか」儂はデレクに頼む。


「わっかりました!このデレクにお任せください!」


 デレクはムフーッ!っと鼻息を荒くすると、儂を案内すべく歩き出した。


 当然ルディは抱えたまま。


 ジタバタとルディも暴れるが、騎士のデレクはびくともしない。


 儂はルディに頑張れっと念だけ送ると、デレクの後についていった。


ルディはもふもふされる運命なのだ。

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