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二階五号室 桃太郎を読んでやる女

二階五号室住人紹介


姫百合ひめゆり心花みはな・・・年齢は多分五歳とかそのくらいの女の子。頭が良く空気が読める上に、心優しい癒し系。※心花という名前は、宮座頭数騎さんに許可を頂いて使用しております。


お姉さん・・・本名不明、年齢不明、男性履歴不明の三重不。酒好きで、良く心花に童話などを聞かせてあげているが、心花との関係も不明。

 昔々あるところに桃太郎という桃から生まれた青年がおりました。

 桃太郎は、ある日言いました。

「おじいさん。おばあさん。僕は鬼ヶ島へ行って鬼共を退治してきたいと思います」

 おじいさんとおばあさんはとても心配しましたが、桃太郎の決心は固く、結局鬼ヶ島に行く事になりました。

「これは、ワシが昔使っていた刀だ。これを持って行きなさい」

「ありがとうおじいさん」

 おじいさんはその刀のほかに、立派な服もくれました。

「桃太郎キビ団子をこさえたよ。お腹が減ったらこれをお食べ」

「ありがとうおばあさん」

 おばあさんはたくさんのキビ団子のほかに、立派な旗をこさえてくれていました。

 そこには日本一と書かれています。

「それ、日本一の桃太郎。やれ、日本一の桃太郎」

「それでは、いってまいります」

 おじいさんとおばあさんの頑張れの声を背中に受けて、桃太郎は鬼退治へと出掛けました。

 その道の途中。

「桃太郎さん桃太郎さん。お腰につけたキビ団子、一つ私にくださいな」

 茂みの中から、犬が現れて桃太郎に言いました。

「あげましょうあげましょう。これから鬼を成敗に、ついてくるならあげましょう」

 桃太郎はキビ団子をあげると、犬を家来にして、また歩き出しました。

 その途中で、今度は猿と雉を同じように家来にして、桃太郎は鬼ヶ島へと急ぎます。

 そしてついに鬼ヶ島へと到着しました。

 船で海を渡り、大きな門の前に着いたとき、桃太郎は大きな声で言いました。

「やい、鬼ども。桃太郎が退治に参ったぞ。ここを開けろ」

 すると、ゆっくりと門が開き、中からたくさんの大きな鬼たちが出てきました。

「野郎共、桃太郎をやってしまえ」

 さあ、決闘の始まりです。

「わんわん」

 犬は鬼の足に噛み付きました。

「うひゃあ、痛い痛い」

「ききー」

 猿は鬼の顔を引っかきました。

「こりゃかなわん、勘弁してくれえ」

「けーん」

 雉は鬼の目を嘴でつつきました。

「ぎゃああああ」

 その頃、桃太郎はと言うと。

 鬼の大将と、一騎打ちの真っ最中です。

 かきーんかきーん。

 刀を打ち合う音が聞こえてきます。

「やあ、とう」

「む、むむむ」

 かきーんかきーん。かきーーーん。

「ま、まいったあ」

 遂に桃太郎は鬼の大将の刀を弾き飛ばしました。

「見たか。この桃太郎こそ日本一」

 そうして桃太郎は高々と刀を持ち上げます。

「ははーー」

 その姿を見て他の鬼達も、皆ひれ伏しました。

「それ、日本一の桃太郎。やれ、日本一の桃太郎」

 家来たちも大喜びです。

 桃太郎は鬼たちが村人たちから奪っていった金銀財宝を取り返すと、

「もう悪さをするんじゃないぞ」

 そう言って家へと帰っていきました。

 それにしても、問題はこのお腰につけたキビ団子です。

「これを全部食べて帰らなければ、おばあさんが悲しんでしまう」

 そう言って、たくさんのキビ団子を家来たちに分けました。

 中でも特に鼻の利く犬が、

「桃太郎さん桃太郎さんこのキビ団子はもしかしたら腐っているかもしれません」

 そう言って殆ど確信を持って鼻を押えました。

 猿も雉も、自分の中にある野生がそう告げていました。

「それでも全部食べなければ帰れない」

 そう言われても、ここが養子のつらい所です。

 養父母に出されたものを、残すなんて事は考えられません。

 仕方なく一人と三匹は、酸っぱいキビ団子を頑張って平らげたそうな。

 おしまい。



「みはな、わんちゃんが好き」

 お姉さんの膝の上で、心花みはなは後ろを振り返りました。

「メだ……マザコンはダメだ……マザコンはダメだ……マザコンはダメだ……マザコンはダメだ……マザコ」

 見ると、お姉さんは焦点の定まらない眼差しで、うわ言の様にそう繰り返していました。

 心花はお姉さんの膝の上からそっと降りると、大切なもの箱の中から塗り絵とクレヨンを取り出して、離れた所で腹ばいになってそれを開きました。

 今はそっとしておこう。

 そんな思いと共に、今日は好きなだけお酒を飲ませてあげようと心に決める、ちょっと甘い心花ちゃんなのでした。

キジはとても恐いヤツです。

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