表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

三階七号室 小心者の内心 コンビニ編

三階七号室住人紹介


烏森口からすもりぐち修吾しゅうご・・・身長百八十六センチの小心者。超高層内弁慶。その胸の内をぶちまけられるのは、同居している敦にだけ。自称エリート銀行員。


鳴下なりしたつとむ・・・売れない漫画家。細かい事にこだわらない性格で性癖も多分そう。修吾と暮らせてる理由はちょっと謎。

 コンビニの燃えるゴミのゴミ箱には、大別して二つの種類がある。

 一つは、アホみたいに常に大口を開けているもの。

 そして、もう一つが、この、口に内開きの蓋のついたものだ。

 こいつが厄介なのは、この蓋を押さなければゴミを捨てられないという事だ。

 この何の汁だか分からない汁まみれの蓋をだ。

 この蓋と、ゴミ箱の素材は恐らく同じ物。

 そして、これを利用する人間は手にごみを持ち、ごみで蓋を押しつつ口をあけるヤツが多いと思う。

 だから、この蓋はいつも何の汁だか分からない汁まみれなんだが。

 ここで一つ疑問が生まれる。

 それなら、この蓋のいつも俺たちを見ている方。

 こいつは、ゴミ箱の内側、つまり最も汚い部分と同じ状態だってことじゃないのか?

 しかも、恐らくそのゴミの最もフレッシュな時に、一番早く接触するのがこの蓋の表部分だろう。

 それならいっそ、蓋を外開きにして、其処に取っ手でも付けてくれた方が、よほど衛生的に思える。

 内に開く、「押す、入れるタイプ」ではなく。外に開く、「掴む、開ける、入れる、閉じるタイプ」の方が。

 確かに行程は二つも増えてしまう。

 しかし、これからコンビニに入るにしろ、これからコンビニから帰るにしろ、さあ、いまから新しい商品を触るぞという時に、このゴミ箱を利用し、あまりふさわしくない手の状態になってしまうよりは、百倍もマシだろう。

 と、まあここまで語らせてもらったわけだが。

 こんな所で大騒ぎするのでは、いかにも素人くさい。

 俺の手には、この間このコンビニで買った商品のゴミが、一袋に纏められて握られている。

 コンビニのゴミ箱に家庭用のゴミを捨てる事は許されていないが、これはまさしくこのコンビニで生まれたゴミだ。

 いわばサケの遡上。

 ヤンキーが母校に帰るのと一緒だ。

 一緒にすると色んな人に怒られそうだが、気にしない。

 そして蓋問題。

 俺くらいになると、こんな問題は簡単に解決してしまう。

 例え、内に開く「押す、入れるタイプ」でもだ。

 俺はおもむろにポッケから、ポケットティッシュを取り出す。

 そこから、三枚ほどティッシュを抜き出し、ゴミを持ったほうの手の甲、つまり右手の甲にその三枚をあてがった。

 プロテクト完了だ。

 これで、このティッシュ部分を内蓋に当て、ゴミを投下すると同時に素早く手を引き抜けば、ゴミ箱のベロにも当たらず、ティッシュも自然にゴミ箱の中に入っていくと言う寸法だ。

 確かにこの無垢なティッシュ三枚は犠牲になるが、目的のためには手段は選べない。

 恐ろしいまでのマキャベリズム。

 さあ、実行だ。

 ティッシュを手の甲に乗せ、内蓋にあてがう。その隙にゴミを投下し、素早く、手を抜けば。

「完璧…………なっ」

 何故、蓋にティッシュが張り付いている!?

 何故だ、俺の計画は完璧なはずだ。

 何かティッシュが内蓋に張り付くような理由があるはずだが……そうか、分かった。

 犯人はこのなんかの汁だ。

 蓋についたこの茶色いなにかの(恐らくコーヒー)汁に、べったりとティッシュがついてしまっている。

 誰かがゴミを分別せずに捨てた結果がこれだ。

 くっ、触りたくはないが仕方がない。

 大部分は直ぐに取れたが、汁の流れに添って、薄っすらとまだティッシュが張り付いている。

 しょうがない、使いたくは無かったが、ウェットティッシュを使うしかあるまい。

 鞄からウェットティッシュを取り出し、蓋を拭く。

 どうせならピカピカにしておいてやろう。

 俺は蓋の汚れ部分は勿論、ゴミ箱の純粋な口部分の縁も綺麗にふき取ると、使ったウェットティッシュをゴミ箱の上に待機させ、新しく取り出した一枚で、自分の手を拭く。

 この、ゴミになってしまったウェットティッシュはどうするかって?

 簡単だ。

 今や、生まれたて同然に綺麗になった蓋を素手で押し、ゆっくりと捨ててやれば良い。

 これぞ完璧、いや、一石二鳥というヤツだ。

 俺はポケットティッシュを鞄に入れながら、優雅にコンビニの扉をくぐった。

別の連載の事で悪いんですが、「ヒーローの条件」多分来週までには書き終わります。

待っててくださった方々本当にすみませんでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ