再会
アリアは、はっと目を覚ました。
アリアの視線の先には青い貝殻でできた天井ではなく茶色い天井。
視線を横にずらすと貝殻の衣装棚や机はない。
自分の上には階層の毛布ではなく白く柔らかなシーツが掛けられていた
ここはどこ?
アリアは朦朧とした意識の中で記憶を辿る。
そうだ。自分は魔女から人間になれる秘薬を貰って…それから…
アリアは毛布をどけて自分の足を見た。
そこには青い鱗はなく白く細長い二本の足があった
…人間になったの!?
アリアは歓喜に体を震わした。
そして部屋中を駆け回ろうと立ち上がろうとしたが、
ドサッという音とともにアリアは床に崩れ落ちた。
足に力が入らないのだ。
アリアが呆然と二本の機能しない足を見つめているとがちゃりという音とともに扉が開いた。
「起きたか」
我に返って声の方を向くとアリアは目を丸くした。
そんな…会えるなんて…
アリアの目の前には
少し茶色がかった蜂蜜のような金色の髪、色素の薄い灰色がかった瞳の青年がいたのだ。
その青年こそが忘れもしない彼女が愛してやまないあの人だ。
「ーっー!!」
会いたかった!
アリアはそう口にした筈なのに言葉にならない。
「大丈夫か?」
あの人は首を傾げるが大丈夫と声を出そうとしても出ない。
どうしよう…目の前にいるのに想いを表せないなんて
アリアは焦燥感に駆られた。
歯がゆい…
あの人は困惑したアリアの表情に察したようだ。
「…もしかして喋れないのか?」
こくりと頷く。
「そうか。それはすまなかった。ベットから落ちたんだな?」
またこくりと頷くとあの人はアリアを軽々と抱えた。
「ーっ!!」
アリアは驚きで声をあげようにも上がらない。
あの人はアリアをベットに優しく下ろし、椅子を引っ張って腰をかけた。
「俺の名前はクリスだ。貴女の名前は?」
アリアと口を動かす。
「マリア?」
アリアは首を振ってもう一度唇をゆっくりとアリアと動かした。
「…アリアか?」
伝わった!!アリアは嬉しくなって激しく顔を縦に振った。
クリスは口元を綻ばせる。
笑った!
初めて見る緩めた表情にアリアは一層嬉しくなった。
「浜辺で倒れているのを見つけたんだ。覚えているか?」
浜辺で?アリアは首を横に振った。
「そうか。何でこうなったか記憶は?」
アリアは一瞬躊躇した後、横に振った。
…海の王様の6番目の姫でーす!貴方に会いたくって人間になっちゃいましたー!!
なんて言えるわけがない。いや、声は出ないけど
記憶喪失ってほうが今の自分には都合がいい。
「分かった。
暫くここでゆっくりとしているといい。」
クリスはアリアの頭をくしゃくしゃと撫でて愛玩動物を見るような笑みを浮かべた。
…絶対この人私が命の恩人だと気づいてないな。
アリアはクリスの行為に嬉しく思いつつも
これからが前途多難であることに内心ため息をついた。