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ポー君の最後

作者: ひこゆき

使い古したリュックを背負ったポー君の目の前には、ノートの置かれた机がありました。その下にはお財布とスマホが置いてあります。

今日、ポー君は自殺の森へと向かうのです。だから大事な物はリュックに入れず家に置いて行ったのでした。


家を出るとスマホは無いので、前に使っていたスマホに保存した地図の画像と、電車の乗り換えを確認しながら、自殺の森へと向かいました。自殺の森とは、あまりにそこで自殺する人が多かった事からいつしかそう呼ばれる様になった森です。ポー君は予想よりも順調に自殺の森へと到着したのでした。

途中、喉が乾いて売店へ寄った時、1人でこの森の近くへ来るなんて自殺者だとバレてしまうかも……と思いましたが、特に誰にも声を掛けられる事はありませんでした。…………勝手ながらポー君はそれがちょっと寂しいとも思いました。


自殺の森へ着いたのは既に日が暮れた夜で、入口に立った時は流石に怖いと思いましたが、入口から少し入った所に見える灯りを見つけて気持ちは落ち着きました。

どうやらその灯りは怖いもの見たさで訪れた人々の集まりで、ポー君は見付からないよう草木に隠れながら森の奥へと入って行きました。


見えていた灯りも遠ざかり、歩き疲れたポー君はそろそろいいかと大きな木の根元に寝転がりました。

噂に聞いていた程自殺の森に怖いものなど無く、静かなものでした。


目を閉じると、家を出る前にノートに残した遺書が思い出されました。

最初の1ページに『 さようなら』と一言。横には昔家族みんなが褒めてくれたネコの絵を描いておきました。


本当は、出来るなら生きていたいと思いました。死ぬのはもちろん怖いです。痛いのも怖かったのでこのまま餓死が出来たらいいなと思っています。


…………生きて行く事は出来なかったのでしょうか?


ポー君は仕事に疲れていました。退職も考えましたが家族が許してくれる訳がありません。家族の反対を押し切っても、次の就職先を見付けられるとも思いませんでした。どうせなら死んで楽になりたいと思いました。くだらない理由だと思う人も居るでしょう、しかしポー君には辛い苦しいつまらない人生でした。




太陽と月が数度入れ替わり、ポー君の命も尽きようとしていました。

そこに、ガサガサと草木を大きく揺らす音が響きました。


ポー君の前に、大きな熊が現れたのです。


衰弱し切ったポー君に逃げる体力はありません。ポー君にとてつもない恐怖が襲い掛かります。

あの爪に裂かれたらどれだけ痛いでしょう? あの牙が体に突き刺さったらどれだけ痛いでしょう?


怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い!!!!





ポー君は最後に想像を絶する痛い思いをして、その生涯をようやく終える事ができました。




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