隠れ家カフェのいいところ
スーパーカーが来てから少しは客足が伸びて以前よりマシになったものの、やはりカフェの中は静かな空気が流れていた。
マキは注文が止まったところで少しカウンターに寄りかかり大きなあくびをした。
「眠くなるなあ、まあ静かなカフェってのも結構オシャレな感じするけど。」
そんなマキを見て、カップを一つ一つ丁寧に磨いていたヤンはにこやかに笑う。
「こういう雰囲気も悪くないですよねえ、でもマキさんが来る前は本当にお客さんいなかったんだよ、店長の車目当てのお客さんも居るかもしれないけどやっぱりマキさん達がここで働いてくれてるからお客さんが増えたのかも。」
マキは不思議そうな顔をしてヤンに聞く。
「私、別に特別な事とか何もしてませんよ?」
ヤンは少し気恥ずかしそうに下を向いて答えた。
「マキさんドジだから最初は仕事できなかったけど、でも頑張って仕事してるところが可愛らしいっていうか、そういうのがお客さんに伝わったんじゃないかな。」
マキは頬をプクッと膨らませて
「ドジとか直球で言わないでくださいよ……。」
とヤンを小突く、そして少し微笑んで口を開いた。
「私が可愛いですか……、ヤンさんはどう思ってるんですか?私の事。」
唐突な質問に驚いたヤンは変な声を出す。
少し考えたあと、ヤンは語りだした。
「なんていうか、お茶目で、まあそこそこ可愛くて……」
「そこそこ?」
マキがニヤリとして言う。
「えっと、可愛くて。」
「まだ足りないかな。」
「すっごく可愛くて!それでいてたまに頼れるとこがあって!なんていうかみんなの愛されキャラっていうか、ずっと一緒にいても苦しくない人です!」
ヤンは流れに任せて全て言い切る。
「それって告白?」
クスっと笑ってマキが問う。
「まあ……勢いで言っちゃったけどそういうことになりますね。結構前から好きだったかもです。」
ヤンは真剣な顔をしてマキを見る。
「アハハハ!なにそれ!」
マキはヤンの言葉を聞いて笑い転げる。
ヤンは少し落ちこんで黒歴史が増えたなと考えていた。
「結構前から好きだった”かも”って……。」
マキは笑いながらヤンのセリフを繰り返した。
「もう!”かも”じゃなくて好きだったんでしょ!良いよ、私達お似合いかもね。」
ヤンはそうだよね……と硬く笑った後、言葉を整理し直す。
「え。」
目の前で笑い終えて落ち着こうとするマキを見て信じられないような目に変わる。
「いいの?彼女になってくれるってこと?」
マキはそうだってば!と小さくつぶやき肩を叩いた。
「今日から幸せにしろよ、相棒!」
窓から差し込む夕日に照らされた2人を静寂が包み込む。
「やっぱ良い雰囲気だよね、ここ。」
ヤンは雨が去った空のように澄んだ笑顔で微笑んだ。




