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ムショへの切符

 「この人痴漢です!!」

朝の騒々しい駅のホームに響き渡るキンキンと耳の痛む声。

そこにはカフェで働くヤンと呼ばれる男性と化粧の濃い太ったブスがいた。

「やってないよ!!」

ヤンは叫ぶ、虚しい声で。ありがとうヤン!16話まで繋いでくれて!!

「やってないって!!」



 正義感溢れるサラリーマンに連れられて事務所に来てしまったヤン。

ブスはヤンを指さし叫ぶ。

「コイツが私の上から下まで舐め回すように触ったの、もう心はズタボロよ!」

駅員はまあまあとなだめる。駅員がヤンの方へと顔を向けた時ヤンは悟った。

このままでは魔女裁判のような質問の果てにムショ入りだ、この先は心理戦で切り抜けなくては・・・と。

ヤンは相手の反応を探るべく発破をかける。

「なら電車の監視カメラをみたらどうですか?それではっきりするでしょう。」

余裕と失笑を交えて発言したがヤンの予想とは裏腹に、はあ?という顔をしてブスと駅員に見られる。

「いや、実はまだ電車にカメラは無いんです。ですからそう言ったチェックは出来ません。」

ブスはニヤニヤとヤンを見つめて思った。

(ふふ、この弱そうな奴をハメれば慰謝料ウハウハよ、さあ負けを認めなさい。)

ヤンは焦った、カメラという言葉にブスが揺らぐと思っていたからだ。

しかし現実は自分がちょっと頭の弱い人に見られただけである。

「やばい、このままではムショにぶち込まれてケツの穴を可愛がられる。」

「どこの国だよ・・・。」

駅員が完全に呆れムードで突っ込む。

そこでヤンはとっさに思いついた。

「弁護士を呼べ!!」

立ち上がって机を叩くヤン。

「どこの?」

受話器を持って聞く駅員。

「ああ、えっと」

ヤンの格好は決まらないまま話が進む。



 「なんで私が呼ばれるの。」

マキが来た。

「ごめんなさい、弁護士と繋がりとか無い。」

ため息をついて今だに怒り心頭のブスを見る。

「っていうか、こんなブスに痴漢したの?」

ブスがエイリアンのような雄叫びをあげる。

ヤンは青い顔してそんなの絶対ないと否定した。

ブスは攻撃の対象をマキへ移した。

「なによこのブス女!いきなり来て勝手な事言わないでよ!」

マキは腕を組み高圧的な態度でブスに立ち向かう。

「あなた鏡見たことありますか?あなたが痴漢されたなんてとても思えない。」

見下すような目でブスを睨むマキ。

ブスがまくし立てる度に液体が駅員へ飛び駅員の士気を下げた。

「だいたい、どうせ慰謝料目当てで嘘でもついたんでしょ?」

マキは確信を突く、心拍数の上がるブス。

「そっ、そんな訳ないでしょう!?デタラメ言わないでよ!」

「証拠はあるわ!」

ニヤッと口角をあげてブスを見る。

「この人は・・・ゲイよ。」

瞬間、ブスの横を衝撃の波が通り過ぎる。

脂ぎった髪を巻き上げ、たるんだ腕に鳥肌が立つ。

厚い唇がずっしりと開き重そうなまぶたが持ち上がる。

「チッ、チクショオオオオオオォォォォォォォ!!クソ女め!コケにしやがってええええぇぇぇぇ。」

ヤンはまったく話を飲み込めず白目を向いている。

駅員といつの間にか現場に来た警察はうんざりした表情で事を見つめていた。




 その後、遠くからそのやりとりを見ていたという少年が現れ無事ヤンは釈放された。

ヤンは道中マキに礼を言った。

「いやぁ、本当に助かりましたよ。なんか今日のマキさんはいつもと違ってシャキッとしていてカッコ良かったです!」

マキはヤンの肩を思い切り叩き

「いつもと違ってってなによ。」

とヤンを睨む。

「いやだって初めて店の面接に来た時も凄く抜けた子だなあって思ってたから・・・」

マキは返す言葉が見つからずヤンの肩を殴った。

「痛い・・・」

この日、ヤンがマキに対する関心は少し違ったものに変わったのであった。

「ったく、ゲイの癖に・・・」

「えぇ!?あれ咄嗟の嘘じゃなかったんですか?」

「どうでしょうねー。」

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