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嘘の代償

 「なんで兄ちゃんここにいんの。」

アニは勢い良くよっ!と手をあげる。

「可愛い妹に何かあったら大変だし寂しがってると思って。」

兄ちゃんと呼ばれるワンピース姿のアニ、それをカエデが珍しがって寄ってくる。

「なになに?マキちゃんのお姉さん?」

「いや、兄のアニです。」

「わあ。」

手を合わせて笑顔かどうか微妙な表情をしてカエデは固まる。

「えっ、聞こえなかった、姉のアニちゃん?」

「兄のアニちゃん」

「うちの妹がお世話になってます。」

アニは笑顔を作りカエデの手を握る。

「男なの?すごーい女の子に見えるよ!」

アニはカエデにおだてられ上機嫌だった。



 「で。本当は何しに来たの?なんか悩み事でもあったの?」

マキはアニの前にコーヒーを置いて隣に座る。

「え?なにもないよ、本当に見に来ただけ。」

アニはマキに笑顔を向け身振り手振りで否定する。

「兄ちゃん昔から不安になると親指の爪必死にこする癖あるから隠しても無駄だよ、ばればれ。」

自分の無意識な癖を指摘されすぐに手を後ろに回す。

しかしマキの真剣な目を見て観念し渋々口を開いた。

「実はモデルやめたんだよねえ。ちょっと揉めちゃって……。」

「なんだそんなことかぁ。心配して損した。」

マキはため息をつき椅子にもたれかかる。

「じゃあなんでまだそんな格好してるの?」

モデルをやめたアニには女装をする必要がない。

「そういうの好きなのぉ?」

マキはニヤニヤとアニを見る。

「いや、まあ嫌いと言えば嘘になるけどそれ以上の理由があるんだよ。」

アニは落ち着きなく目線を泳がせながら言う。

「もうなんなの、早く言ってよ。」

「大学の人たち、みんな俺が女だと思ってるんだ。飲み会の時とか甘えてお金全部出させてたんだよぉ……。」

「恐ろしいぐらいの自業自得だな。」

涙目になって青ざめているアニをため息まじりに見る。

「謝って事情話せば助かるかもよ。」

「いや無理だろ。」

「もう一人でなんとかしろ!!」

アニは泣いてマキの足にすがりつく。

「お願い助けて助けて」

「コイツ……、そういえばリンちゃんに聞いたけど男の娘っつって人気らしいじゃん、それでいけよ。」

アニは顔を上げ顔に希望が浮き出る。

「まじか、そうだよな!イケる!」



 〜 一週間後 〜

弱々しく開いたドアの隙間からアニが入ってくる。

「兄ちゃんどうしたの!」

マキはボロボロになっているアニを見て驚く。

「いや、さっき飲み会でカミングアウトしたら面白がった奴らに揉みくちゃにされた……。」

「なーんだ、許してもらったんだ!何されたの?」

「揉まれた。」

「え?」

「揉まれたんだ。」

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