「うわっ……酒臭っ!?」
今回は3部いっきです(長くなった)
そこはは、とても賑やか――というか賑やかすぎる状況だった。
賑やかな音楽が響いて、あちこちで昼間から何か白っぽいお酒(後から聞いたが馬乳酒というものらしい)を飲んでいた。
それ以外にはカードゲームをしている人がいたり、食べ物をがっついていたり、何か話し合ったりしている人がいた。
汗臭さと独特の臭いが入り混じって、異様な空間に見える。
ウォンタリアのギルドは、街と同じくらいの活気が満ち溢れていた。
「すごい……」
「これでもまだ半分。いつもよりかは静かな方だぜ?」
僕があっけにとられていると、ルジェさんが後ろから話しかけてきた。
「そうなの?」
「ああ。ま、少ない理由は大体察しが付くけどな……」
「だいたいはスウェトニアへ遠征に向かっていったんだろうな。今いるのはまだなりたての奴らだろう」
ナナシェさんが冷静に分析していると、酔っ払いが一人絡んできた。
タラコ唇で頭にタオルを巻いていた。
「うわっ……酒臭っ!?」
「よぉ~? のんでるかぁ~? るじぇ~?」
「んお? パセリのおっさん、どうしたんだよ」
「どうしたもこうしたもあるかよぉ~。今しがた帰ってきてみたら、なんか面白れぇことをやるっていうのに、俺はくいっぱぐれたのよぉ~。うぇっへへへへ」
パセリさんはまたぐいぐいとお酒をあおって「ぷはぁ~」とため息をついた。酒臭いのが鼻につく。
「アイヤー、パセリ。そろそろ離さなイトそいつ酒臭いのデつぶれるヨー」
「んあんだぁ? こいつ、酒を飲みなれてねぇのかよぉ? な~ら飲ませてやるから、ちょっと俺の席にこいよぉ。メシも食わせてやんぞぉ? ぐぇっへへへへ」
「ぐほぇっ、げほっ……た、助けて、三人とも……」
僕が皆に手を伸ばしていると、
「マジ!? やったー! メシメシィ!」
「タダのゴハンほどウマイものナシね!」
「折角だ。頂かせてもらおう」
「たすけてよぉ!?」
三人ともお腹が空いてたようだった。いやまぁ僕もお腹が空いてたんだけど。
※――――
ご飯はおいしそうなものだった。
お肉とチーズと香草を紙で包んで蒸されたものや焼き魚、ふわふわのパンや暖かい野菜たっぷりのスープが置かれた。
どれもこれもおいしそうな匂いがする。ルジェさんたちはみんなそれぞれをおいしそうに食べていた。
もちろん、僕も食べたかったのだけれど、パセリさんに絡まれていて、それどころじゃなかった。
食べようとするたびにお酒を飲ませようとしてくるので、それをなんとかのらりくらりとかわしていると、いつの間にか僕が食べる分はルジェさんが食べてしまっていた。
「あー!! 僕のご飯が!」
「固いこというなって。あとで食べさせてもらえばいいだろ? ……げぷっ」
「おいしそうにげっぷまでして! ひどいよぉ!!」
泣きながら僕が抗議すると、ランさんがそれを抑える。
「まぁまぁ。どうせだからパセリにつくて貰うヨ。パセリは《料理人》だからネ」
「《料理人》って……この人も冒険者?」
「ここに来るのは依頼人か冒険者かどちらかだ」
「パセリはその《料理人》でも珍しい種類だがな」とナナシェさんが付け加えた。
パセリさんはまた笑うと、
「そぉ~さぁ。おれっちは《料理人》。しかも作る料理はぁ~、イッピンなんだぜぇ~? ヒック」
「……パセリ、この料理もお前が?」
「うぇっへへへへ。ちょいとあまりものをつかって料理しただけのことよぉ~。今度の冒険には持っていけない痛みかけのモノさぁ」
「食あたりなども起こしたことはないし、料理の腕前は大したものだな。ほんとに」
「うぇっへへへへ。褒められたぜぇ。そら食いっぱぐれ坊主。一応さっきのあまりもんだが、食うか?」
「い、いただきます」
美味しそうな肉汁がしたたる料理だ。いい匂いがする。
恐る恐るそれを一口僕は食べた。
すると、口の中で甘辛い味がじわり、と広がった。
噛み締めるとどこから出てきたのかとわからない、多すぎず少なすぎない肉汁がぶわっと広がる。
鼻からいい香りがふわりと抜けていくのがわかる。
飲み込んでいったとき、僕は叫んだ。
「おーーーーーーいしーーーーーーい!!?? なっにこれっ!? すっごく美味しい!? お肉焼いた料理なのに!」
「うぇっへへへへへへへへ!!! ただ焼くだけじゃあない。腐りかけの肉をうまく焼いて、出てくる肉汁をうまく閉じ込めるのさ。噛めば噛むほど旨みがつまった肉汁が溢れる。パセリ特製の肉料理よぉ」
「ま、パセリの料理は保存が効きにくいのが難点だがな」
「うぇっへへへへへへ……そいつを言われたら身も蓋もねぇぜ……」
僕が肉料理を食べていると、どこか悲しそうにいうパセリさんが言った。
その近く。そこにあった本に僕は目が止まった。
「? おいパセリ、その本なんだ?」
ルジェさんも気づいたのか、パセリさんに聞いた。
●用語解説
《料理人》
職業の一つ。
調理に秀でた戦いには向かない職業……と思われているが、一流を超えた料理人であれば巨大魔物すらも三枚に下ろすといった芸当が可能となる。
だがその域に到達した《料理人》は歴史上ただ一人とされており、その人物は《料理人》からは『ワンダーシェフ』と呼ばれている。




