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ぼうけんの司書  作者: 嫁葉羽華流
共国歴185年 白羊の月12日。晴れ。ウォンタリア領スウェトニアにて。
17/29

「僕に、立ち上がる力を貸して――!」

 僕は、水の中にいた。

 こぽこぽと口から泡が出てくる。


――ああ、そうか。


 ふよふよと漂う水の中で、僕は分かった。


――僕は、死んだのか。


 そして理解したときに、僕は、とても後悔した。

 ユズさんに本を返してなかったとか。

 ナナシェさんに怒られるだろうなぁとか。

 そして何より後悔したのは、

 本をみんな、守れなかった。


――なんで、本を守れなかった、なんて思ったんだろう。


 漂いながら、僕はふと思った。

 ああ、僕は本が好きだ。

 読んでいて楽しかったし、面白かったし、なにより読んだ時に喜んだ顔を見れたのはうれしかった。


――そういえば、パセリさん大丈夫かなぁ。


 僕が連れ去られるときに斬られていたような。

 でもそんなのももう関係ないだろう。

 ああ、僕は……もうすぐ死、


『死なないよ』


 誰かが言った。

 優しい、風のような、つぶやくような声だ。


――誰?

『死なないよ。君は。死なせない』

――誰なの?

『君は。『王様』に。なれる人物だから。死んだら。だめ』

――『王様』? 何? なんなの?


 僕が声に質問をする。

 声は形になって、僕の前に現れた。

 女の子だ。

 僕と同じくらい。黒の服、黒の目、それを全てはっきりさせるような白い肌。

 ぼやけてはいたけれども、服はとても豪華なものだと感じた。


『君が。私を。助けてくれる人だと。私は。思うから』

――『王様』って何? 君はだれ?

『『書物の王』に。君はなれるから』


 そういうと、女の子は僕に向かって本を投げた。

 赤黒い表紙の、紐しおりがついた本。


『それは。『封の書』。役割は。事象を『本に封じる』こと』

――『封の書』?

『全ての始まり。全ての終わり。――『0』の本』

――『0』の本?

『――探して。『王様』』

――まって、まだ、まだ聞きたいことが……。


※――――


「まだ、聞きたいことが……!」


 と、僕が目を覚ますと、ガレキの中に僕はいた。


「がほっ、げ、ほっ……! お、重い……!」

 

 狭く、苦しい中で僕が息をする。

 外では銃や剣が合わさる音がする。

 ずしん、ずしんと地響きもする。


「あ、あ……」


 そうだった。

 ここはスウェトニアの領地で、アカームが……


「あ、カー、む……!」


 少し首を回すと見えるのは、背表紙が傷ついた本。

 痛ましそうにどれもが転がっていた。


「なんて……こと、を……!」


 歯を食いしばった。

 奥歯をわれんばかりにかみしめる。

 痛ましい姿の『彼ら』をみて、僕はいたたまれなくなった。


「ごめんね、ごめんね……! 後で、治してあげるから……! だからお願い、」


 少しでいいから。


「僕に、立ち上がる力を貸して――!」


●用語解説

『封の書』

詳細は伏す

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