――僕に何ができる?!
三話連続です。
「よっと!」「ぐえ!?」
ユズさんは僕を放り投げると脱出したときにつかったナイフのようなもので応戦した。
「ユズさん!?」
「大丈夫大丈夫……っていうわけにもいかないっか~……」
ユズさんの腕からは煙と血がでている。手に持っていたナイフも溶けており、その表情もどこかキツそうだった。
「これ……酸かなぁ。割ときっついなぁ……」
「ゆ、ユズさん!」
僕はユズさんの元に駆け付けようとした。
が、足がすくんで動くことができなかった。
――僕に何ができる?!
――この状況で、ユズさんがどうして僕を投げた!?
僕が考えを巡らせていると、ユズさんは僕に何かを投げてきた。
あわてて受け止めると、それは本のようだった。
題名は――『極東預言書』。
「わっ!?」
「ライブくん! それ持って逃げて!」
ユズさんはそういうとまた別のところから何か札を出した。
「で、でもユズさん!」
「私は大丈夫だから! ライブくんはそれを持ってここから逃げて!」
ユズさんはそういいながら札を突進してきた化け物に投げる。
化け物に命中したはずの札は化け物の体をすり抜けたと同時に溶けてしまった。
「ちょっ……そんなのアリ!?」
「でもユズさんが……!」
「それは私の命よりも大事な本だから! 守ってくれないとヤだからね!」
ユズさんは化け物の突進をよけながら何かを投げる。
見ると先ほどのナイフのようなものだった。やっぱり化け物の体をすり抜けて溶けていた。
「ちょい……それは反則でしょだから!! 物理無効的なアレ!?」
「ユズさん!」
「いいから逃げて! ここじゃ君は足手まといなの!」
「…………っ」
足手まといという言葉を聞いて、僕は逃げることを決意した。
泣きたい気持ちを抑えて、僕は逃げて行った。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
僕は必死に逃げた。
無我夢中になって逃げていると、出口が見えた。
「! 出口だ!」
そのまま外に出る。
「よかっ――」
僕が思わず笑った瞬間、
首に強い衝撃が走って、
僕は、
倒れてしまった。
●用語解説
・『極東預言書』
極東『ジパング』に伝わる預言書。
内容は極秘となっており、それを閲覧、並びに書くことができるのはジパングの国王のみとされている。