053
「先輩は間違っている」
無数の金色の帯が翔を覆う。
「楓さん……」
金縛りから解けた京也に、楓が近づく。
翔をグルグル巻にした金の帯は、覆い尽くす部分がなくなると激し振動を起こしてはじめていた。
「その子を連れてここらか離れろ」
「楓さんを置いてはいけない」
「いいから」
「できません。兄は最強の能力者です!」
京也は譲れない。楓の能力は未知数。だが翔の力は、どんな能力者でも歯が立たない。小さい頃からそれを見て京也は知っている。敵になるとこれほどまで手ごわい能力はない。
「ボクなら大丈夫だよ」
胸を押さえ気丈に笑うココロ。京也はその頬に触れた。
「少し離れていてくれるか」
「わかった」
京也の目が瑠璃色に変る。
「楓さんも下がっていてください。兄との決着は僕がつけます」
京也が言い終わらないうちに、翔を包んでいた帯から剣先が頭を出す。突き出た剣が、左右に開くと、風神と雷神を手にした翔が立っていた。
「楓ちゃん。本気をださないといけない。真剣勝負でその優しさは命とりだ」
瞬時に移動した翔が、風神を振り、防御態勢をとる楓の帯を切り裂いた。さらに、ためらうことなく風神が楓を襲う。刃音が空気を伝わった。
間一髪。京也のブレスレットが形を変え、楓を包み込む。
「本気なんだね」
「京也。邪魔するならお前でも手加減しない」
「発動」
京也が移動した。
「電撃」
雷神から放たれた雷が京也を追跡する。
衝撃をかわし、追跡を振り切った京也が姿をみせた。
「雷神の特性はしっている」
「お前もアイツ(ワスレ)からブレスレットをもらったんだな」
翔は、双剣をブレスレットに戻す。
「フリーズ」
翔の唱えた魔法が地面を凍らせ始める。氷が浸食すると、気温が急激に下がった。
「発動」
京也がココロを抱きかかえ、休むことなく楓の中に飛び込む。
「ココロを頼みます」
「京也」
球体で守られている楓とココロの呼びかけに答えず。飛び出した京也が、ホバーシューズを吹かす。
「逃がさない」
「逃げませんよ」
京也が向かった先、それは圭介が残したある物を回収するため。京也が素早く目的物に手に触れると、黄金の光が広がった。同時に翔が攻撃魔法を仕掛ける。
「ライトアロウ」
白い矢が京也に降り注ぐ。
だが、矢は突き刺さることなく消滅した。
京也は、圭介が脱ぎ捨てていったあの鎧を身にまとっていた。
「兄さん、これで魔法はききません」
「それはどうかな」
翔が腕を広げる。
「ジャッジメント」
巨大な時計が描かれ、アットランダムに流れでる数字たち。
「京也逃げて」
球体に守られている楓の脳裏に残酷な光景が浮かぶ。
「ヘブン or ヘル」
歪められた空間に3桁の数字が並んでいく。
京也の背中に浮かび上がる1つ目の数字「6」
京也が暗黒に包まれた。
「先輩。やめて下さい」
楓の声は翔には届かない。
浮かび上がる2つ目の数字「6」
どこからともなく現れた鎖が京也の体を縛りつける。
両手、両足、首を完全に固定した。
「発動」
口にする京也。
しかし、移動はできず。空しく鎖が揺れた。
浮かび上がる3つ目の数字「6」
暗闇か唸る獣の声。
楓が目をそらす。耳に入る音が聞こえてこない。
目を開くと黄金の鎧が輝き闇を打ち消していた。
『リセット』
再び空間に3行の文字が回転していく。
『××7』
京也を繋ぐ楔がほどかれた。
『7×7』
あふれる光が闇を浄化する。
『777』
祝福の讃美歌が聞こえてきた。
『ヘブンズドア』
ジャッジメントから解放された。
「ばかな、ありえない」
翔は、初めて解除された魔法に驚いた。
「魔法をききません」
京也の言葉に反応するかのように、翔から笑みが消えた。
「覚醒」
翔が能力を解放した。
七色のオーラをまとい、本気モードに翔が突入した。
翔が指を鳴らす。
炎の槍が京也を襲った。スペードが使った能力。
「発動」
「移動」
京也の背後に、圭介の能力を使い翔が現れる。気が付けば、翔が切りつけた短剣が京也の肩をかすめていた。クローバーが使用したドリル型の短剣に血がにじんでいた。
「あきらめろ、京也」
翔の能力は、オールマイティ。トリプル、ダブル、シングル全ての能力の発動が可能な特別な3つの能力のひとつ。絶対的能力の持ち主。それが翔が「奇跡のトリプル」といわれるゆえん。
「発動×∞」
「発動×∞」
オウム返しに翔が、京也の力を簡単に使用した。ともに回転するふたり。
「そんな……」
翔の拳が、京也のテンプルに決まる。京也は地面に取れ込んだ。
「命はとらない。安心しろ、圭介も生きている。仮死状態にしただけ。兄を殺されるのを見たくないと思ってね」
崩れ落ちる京也を残し、翔は緑の球体に移動した。
「振動」
翔が楓の能力を使い球体を打ち砕く。
「やめて」
立ちはだかる楓に容赦なく翔が能力を使う。
「ナイトメア×∞」
首を上げた京也の先に、楓を繰り返し覆いつくす黒い影。その壁の数、およそ無限。
覚悟を決め、目をつぶるココロ。
翔のブレスレットがシャムシールに姿を変えた。
「ココローーーーーー」
京也が叫ぶ。姫野に誓った。命に代えても守りぬくと。
「発動」
ココロの首にシャムシールが牙をむく。
飛び込み現れた京也が、ココロを抱きしめる。
寸前で剣が止まった。
「どけ、京也」
「いやだ」
「お前も死にたいのか」
「兄さんは間違っている」
京也は動かない。
ココロを守れるのなら死んでもいいと京也は思っていた。
「ここは俺が間違って創ってしまった世界。だから終わらせる責任がある」
「どういうことですか」
「能力に酔っていた。悲運な死をとげた人を蘇らせ、もう一度命を与える。神か何かになったつもりでいたんだ。それは間違い。圭介の兄のように、暴走して現世に危害を加え始める奴をみすみす野放しにしてしまった。馬鹿げた理想郷……」
京也はミミを思い出す。翔の言う通り、関係のない人間の命をうばった奴らを許せない。しかし、翔がしたこと全部が全部、間違いだったとは思えない。
「兄さんが言っていることは正しい。でも命を与えて置いて、今度は勝手に奪う。そんな身勝手なこと、絶対納得できません」
「平行線だな」
翔は京也を指さす。
「停止」
京也の動きが止まる。
翔が能力を使い、京也の体の自由を奪った。
「すまない京也」
声がでない京也。
翔が三度シャムシールを振りかざす。
ココロは涙も見せず。翔を睨み返した。真直ぐに。
『兄さんは逃げた。運命に立ち向かうことをやめたんだ。』
『違う。俺は過ちをおかした自分の運命を終わらせるだけだ』
心の声で反論する翔。
シャムシールが突然消えた。
消えた剣がココロを包み込んでいる。
「何故だ。俺が間違っているのか?」
立ちつくす翔に、京也の声が響く。
『ココロは、最後まで運命に向きあった。そうだろう、兄さん』
京也の停止が解ける。
楓を包んでいた闇も消えた。
「俺の負けだ」
翔が天を仰ぎ能力を発動する。
「リライト」
翔が世界を再構築させた。
次回、エピローグ
あとがきも書きたいと思っています。
後、2話おつきあいください。




