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誰よりも早く階段を上り僕は君に逢う  作者: T-99
三本の柱:青~未来編
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052

 遠くから聞こえてくる。

 眠たいわけでもないのに、体が動かない。麻痺とも違う。肉体と意識が分離していた。

「京也。しっかりしろ」

 誰かの声がした。魂が器に戻り。京也の目がゆっくりと開いた。

「大丈夫か」

 楓が心配そうに京也を見つめていた。

「ええ」

 京也の意識はもうろうとしていた。立ち上がる京也を楓が支える。

 時を止めていた実感は、京也にはない。ただ、ライムタベラートが能力の限界を超え、全ての感覚がなくなったことだけは認識できた。

「圭介は?」

「楠木がここにいたのか」

 ぼんやりとした意識のまま、京也は周囲を見渡したが圭介の姿はなかった。

「歩けるか」

 楓の言葉にうなずく京也。

 まだ遅れて言葉が伝達される気がする。ふたりは、城に向かった。

 時計塔の針は、3時17分を指していた。

 


 


 城の内部に人影はない。ふたりは、入口から続く大広間を抜け先に進んだ。すると金色のノブがついたひときわ大きな扉が目についた。

 京也と楓は互いに無言の合図を送る。

 楓が勢いよく扉を開けた。

 部屋には、大理石でできた玉座があり。ひとりの男が座っていた。

「兄さん」

「おそかったな、京也」

「キングは?」

「目の前にいるだろう」

 翔は、おどけて京也に答えた。

 部屋には男がうつ伏せになっていた。その上に、圭介が重なるように倒れている。

「どういうことですか」

「鈍いな、俺がキングを倒した」

「圭介は。殺したんですか」

「仕方がなかった」

「どうして……」

 京也が圭介に触れた。すでに息はなく。ライムタベラートで捕まえることができなかった友は、冷たくなってそこにいた。

「冗談はやめて下さい。先輩」

 楓が翔の前に立った。

「楓ちゃん。冗談じゃない。後は隠れている死人を殺せば片が付く」

 翔が視線を向けた。部屋の片隅に、ココロが震えている。

「子どもじゃないですか」

「関係ない。これで全て終わる」

「ココロは殺させない」

 京也が素早く移動した。

「安心してココロ。君を守るから」

 ココロの頭をそっとなでる。

「発動」

 能力を使い、京也が逆走する。

 中庭に戻るとココロに話かけた。

「ドラゴンを呼んで、ココロだけでも逃げられないか」

「ダメだよ、京也。ピー子はこの中には入れない」

 京也は出口までのルートを検索した。しかし、能力が制限される。砂漠と同じ現象が京也を襲う。見えないガラスの壁が、瑠璃色の階段を屈折させ、先に伸ばすことができない。

「無駄だ」

「兄さん」

 翔が姿を見せる。

「その子は、闇に帰らなければいけない」

「どうして」

「お前には理解できない」

「説明してくれ。兄さん」

「殺してから話してやるさ」

 翔が左手をココロに向けた。

 大きく開かれた指先に、力を込め握りしめてゆく。

「あああ」

 ココロが胸を押さえ苦しみ始める。

「ココロ……」

 助けようとする京也の体が固まった。翔が右手を広げ京也に突きつけていた。強烈な金縛りが、京也を支配する。言葉を発することができない京也に、ココロの悲痛な声が伝わってくる。

「やめて!!!」

 楓のペンダントが金色に輝いていた。

 幾千もの光の帯をまとい。能力に目覚めた楓が、ガラスの壁を砕き現れた。



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