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誰よりも早く階段を上り僕は君に逢う  作者: T-99
三本の柱:青~未来編
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051

 森に着くと、いきなり激しい音が聞こえてきた。京也が向きを変えると、城から白い煙がのぼっているのがわかった。

「見てきます」

「待て」

 楓の静止する声を待たず、京也が能力を使った。



 城の中庭に姿を見せた京也が、素早く茂みに身を隠す。

「兄さん?」

 闘っているのは、翔と金の鎧を着た男。翔の繰り出す攻撃魔法が、男の鎧に吸収されていた。立ち込める煙が消え視界が晴れてくると、男の顔をはっきり確認することができた。

「圭介」

 京也は、後先も考えずふたりの間に割って入った。

 ふたりの動きが止まる。

「ふたりともやめてくれ」

 京也は、翔と圭介を交互に見た。

「どけ京也。そいつは敵」

「圭介は友達だ」

 京也が翔を睨む。

 翔は困った顔を京也にみせたが、すぐに納得した。

「わかった。そいつはお前にまかす」

 翔は京也の頭上を越え、城の内部に飛ぶ。

「ええっ。兄さん」

 再会を祝う暇もなく、翔は我が道を行く。

「あいかわらずだな。お前の兄さん」

「圭介。ここは僕たちがいるべきところじゃない」

「そうだな。でも俺は、ミミのナイトになると誓いをたてた」

「ミミはいない。あれは……」

「言うな」

 頭では理解できても心が従わない。人間はそんなに単純な生き物ではなかった。

「能力で勝負だ。俺を捕まえることができたらお前に従う」

「圭介」

「制限時間は10分。ダメなときは、諦めてくれ」

 圭介は本気だった。能力を持つ者として、能力の優劣でしか判断できない。優れた能力を持てば持つほど、その傾向は高くなる。

「わかった」

 京也は言葉を返す。ライムタベラートVSテレポータ。覚醒した京也は、階段を自由につくりだすことができる。階段が無ければいけないというハンデはなかった。

「3時ジャストにスタートだ。移動は4つの塔に囲まれた中庭のみ。いいか」

 中庭のすみにある時計塔を圭介が指さす。頷いた京也の目が瑠璃色に変化した。

 圭介を脅かそうと、背後から京也は近付いたことがあった。圭介は体にふれる前に移動していた。無意識に能力が働く。何度試みても、成功したことは一度もなかった。

「スタートだ」

 圭介の声と同時に時刻が3時を示す。

「発動」

 京也が、圭介の目の前に現れた。

「移動」

 すぐさま圭介が消える。

 圭介は中庭の東側に移動していた。

「発動」

 京也が言い終わらないうちに、圭介は他のところに向かっていた。

 予想していたが、圭介を捕まえるのは至難の業。京也がいくら捕まえよと能力を発動させても、圭介は捕まらない。1秒で瞬間移動する相手を、3秒かけて追跡していた。単純に能力を使用するだけでは、いつまでたっても捕まえることはできない。すでに3分経過していた。

「諦めるか京也」

「まさか」

 京也は能力を発動させる。圭介の移動に規則性はなかった。東西南北どの方向からも現れる。時には、空中でしばらく静止して上空から京也を見下ろした。圭介の能力は平面だけでなく、立体に展開できる。京也の能力は目的地点として上空を通過できても、空中で止まることはできない。放物線が空しく孤を描いていた。



「後5分。どうする」

 圭介が楽しむように笑う。

 京也の額に汗が光った。

 動きを予測して先回りする必要があった。だが、京也のライムタベラートは、目的地に到達するための能力。直進や山なりに動くことができても直角や、ぐにゃぐにゃと不規則に動くことができない。

『本当にできないのか?』

 疑問が京也に問いかけた。

『イメージして階段をつくれるのなら、不規則な形の階段もできるかもしれない』

 瞬きをする京也が、圭介を取り囲む球体をイメージする。

「発動×300」

 京也が消えると、圭介も消える。

「無駄だよ。京也」

 圭介が動いた背後に京也の影が浮かぶ。

「移動」

 移動した圭介の横に京也の影が忍び寄る。

「どうして」

 圭介は信じられなかった。

 能力をいくら使おうとも影のように京也が現われる。

 永遠に縮まらないはずの2秒差が崩れた。

 京也は毛糸玉をイメージしていた。無数の細い糸のような階段が圭介の体をグルグル巻きにしていた。京也は高速で上り下りを繰り返しながら、糸で包み込んでいく。圭介に逃げ場はなかった。

「捕まえた」

 京也の手が金の鎧に触れた。

「移動」

 瞬間。鎧を脱ぎ捨てた圭介がいなくなる。触れることで囲いがとけ、小鳥が羽ばたく。あと一歩だった。地上に落ちた鎧に圭介の影が反射した。

「あぶなかった。でも、2度はない」

 圭介が瞬間移動を繰り返す。

 1秒ごとに現れては別の場所に移動を瞬時に繰り返す。京也と同じ高速移動を使った。京也の目では、圭介を追うことができない。あまりの速さに、圭介を縛りつけるはずの階段をイメージできないでいた。残り1分を切った。

 砂なら煙幕をはる高速回転や障壁をつくれるが、石畳で覆われたこの場所ではそれも不可能。思いつく策がなかった。それでも京也は能力を発動する。

「発動×∞(無限)」

 残り時間、限界まで能力を使う。もうそれしかなかった。目をつむり。指定された範囲を全てカバーするため、全身全霊をかけ高速回転する。

『速く、速く、速く、もっと速く』

 切り裂く風が痛みに変り、体が震えても能力を使い続ける。

 圭介を失うわけにはいかない。力になり励ましてくれた友を繋ぎとめるため回り続けた。

 感覚が麻痺してくる。

 徐々に何も感じなくなっていた。頭から全身に送られる信号が止まる? ワスレに使用した時と同じ症状が京也に起こった。

『時が止まる??』

 京也の意識がプツリと切れた。

 時計塔の針が、3時15分で止ったまま動かない。

 京也は時を止めていた。

 


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