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誰よりも早く階段を上り僕は君に逢う  作者: T-99
三本の柱:青~未来編
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 太陽をさえぎる城壁が黒い影を伸ばす。ぐるりと取り囲む巨大な壁。出入口の鉄の扉は、2箇所とも固く閉ざされていた。左門には深く彫りこまれた火を吐くドラゴン、両眼が門に立つ者を威嚇する。右門には天高く突き上げられた3本の剣、交わりからもれる光が、見上げる者に届きそうな勢いだった。ここから先は死人の世界。翔は楓にまわしていた手をほどいた。

「正面から入るんですか」

 楓は上空から侵入せず、あえて扉の前に降り立った翔を見ていた。

「楓ちゃん。ペンダントをだして」

 唐突な翔の問いかけだった。

「どうして」

 胸のペンダントが、翔から京也への贈り物ともちろん知っていた。しかし、楓は聞き返さずにはいられなかった。

「いいから」

 強引な翔に逆らうことができず、楓がペンダントを渡す。

「京也がなんと言ってこれを渡したか覚えているかい」

「能力を得るためのお守り」

 翔が鼻で笑った。

「これは能力を制御するためのお守り」

 翔の言葉に、楓は大きく目を見開いた。

「能力が目覚めないように、京也に持たせておいた」

 翔は受け取ったペンダントをみつめていた。

「もっとも楓ちゃんには、ペンダントは関係ないけど」

「どういうこと」

「すでに能力を封印されている」

「能力なんてありません」

 語尾を強くして否定する楓。

「そう思うのは無理ないけど。両親か、それに近い人が能力を封じ込めている。普通に育ってほしかったんだろう」

「嘘だ。父は……」

「未来の階段を上りきったのには意味がある」

「あれは京也の力で」

「違う。楓ちゃんは、羽化登仙うかとうせんて、言葉を知っているかい」

「え?」

 楓は初めて耳にする言葉だった。

「能力を使えば、普通の生活には戻れなくなる。だから慎重に決断してほしい」

 翔が、楓の首にペンダントをかける。透明だった石が黄金色に輝いていた。

「両親の思いを踏みにじるようで嫌だが、ペンダントの力を解放した。望めば楓ちゃんは能力者になれる」

 翔は言葉を詰まらせる。「能力者が必ずしも幸せとは限らない。京也にも能力者になってほしくなかった」楓に対しても同じ気持ちだった。

 翔が手をかざす。右門の3本の剣から伸びた光が、実物の光と変わる。翔のいる場所だけ、影が切り取られ明るく照らし出された。

「ここからは、俺ひとりでいく」

「先輩……」

「待っていれば、京也も来るはずだ」

『京也は先に扉をぬけたはず?』

「いや、俺たちの方が先についてしまった」

 楓の心を読んだ翔が答える。

 教えてほしいことがまだまだ楓にはたくさんあった。『一緒に……』楓が口に出す前に、翔がさえぎる。

「時間だ」

 振り向き翔は、光の道を進んでいった。

 切り取られていた影が、勢力を取り戻す。遠くから見ると、ペンダントが暗闇に浮かぶ星のように輝いていた。

 


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