044
「先輩ここは?」
楓は扉をぬけて驚く。
砂漠が広がっていた。砂が果てしなく、遠くまで続いている。目印が無ければ、どこにいるかわからない。楓は立っている己の存在を、とても小さく感じた。
「クラウディ」
翔が魔法を使う。空が大きな雨雲に覆われはじめる。気温が徐々に下がり、翔と楓の汗が止まる。空と大地が黒色に染まっていった。
「3つだけ質問に答える」
翔は砂に座り込む。手にすくった砂が流れていく。
「なんでも聞いていいんですか」
「いいんです」
翔は白い歯をみせる。
「ここはどこです」
楓は現状を知るべく質問をした。
「砂漠」
「見ればわかります。詳しく教えて下さい」
「2つ目の質問と考えていい」
いじわるそうに翔が言うので、楓は質問を変えた。
「青の柱。未来の意味を教えて下さい」
「死」
「どういうことですか」
「青の柱は、死後の世界に繋がる道。死んだ人間が上っていく階段なのさ」
楓にはわからない。希望を現す未来が、死と同じなんてどうしても思えない。
「人はいつか死ぬ。人のいきつく未来=死。簡単な図式だろ」
「でも、私たちは死んでない」
「ああ、生きている。本来は死んだ人間だけが上りきれる。でも特別な能力、もしくは俺みたいな天才は上りきることができる」
得意げにウインクをする翔、楓は無視した。
「納得できませんが……」
未来=死を受け入れことは、まだ楓にはできなかった。しかし、過去多くの人が青の柱に挑戦した。滝本翔を除いて、誰もなしえなかった頂上への到達。到達した者だからこそ言える真実がある気がした。
「頂上にいた奴らは、何者ですか」
「3つ目の質問と考えていいか」
「はい」
「「好きなタイプを教えて下さい。先輩」とか、「彼女いないんですか」でなく。本当にそんなつまらない質問を答えるので。いいんだな」
「はい」
「後悔しないか。プライベートな……」
「奴らの正体を教えて下さい!」
眉ひとつ動かさず質問する楓に、翔は肩を落とす。
「ある人間が創りだした世界の住人」
翔が空を見上げる。雨がパラパラと落ちてきた。
「死後の世界は複数存在する。目的を達成するため新たに創造された世界。そこに俺たちはきている。わかった。楓ちゃん」
「全然わかりません」
「本降りになる前に行こうか」
翔は立ち上がると、そばにいた楓の腰に手を当てた。驚く楓を気にせず、翔が魔法を唱える。
「フライ」
翔と楓が、雨を避けながら空中に上昇していく。
「プリズン」
翔の魔法が透明な檻を生み出す。檻が四方に広がっていく。楓が使用した魔法の数十倍に匹敵する巨大な牢獄が、砂上にできあがった。ガラス瓶でふたをしたような牢獄を、上空から見た楓が思わず口にする。
「どうして牢獄を……」
「楓ちゃん。4つ目の質問には答えられないよ」
翔は、楓と一緒に城壁の見える方向に飛んでいった。




