042
視界がひらけ姿をあらわす広大な砂漠。灼熱の太陽がギラギラと照りつけ、体感温度が10度以上変わる。
「暑ちぃー。どこだ」
京也が汗をぬぐい、日陰を捜す。
草木はなく生物を感じさせるのは、京也の影のみだった。
ミミと圭介を追い、飛び込んだはずの扉はどこにもない。
予想外の展開。進むべき方向が分からず。四方八方すべて同じ景色に見えた。
京也が意識を集中させる。瑠璃色の目が道を探す。あるべきはずの道はなく。瞬きを繰り返すことで階段をえがきだすことができた。
「能力は使える……」
京也は小指を触る。
癖になっていた。
赤のリングを無意識に確かめていた。
「発動」
京也はイメージした山なりの300メートルほどの階段を上る。最高到達点で白っぽい建造物を発見した。もう一度繰り返す。建造物を取り囲む城壁のようなものが今度は確認できた。「能力を使えばあそこまで行けるか」京也が城壁への道をイメージするより早く、砂漠のいたるところに黒い穴が出現する。
次の瞬間。穴から骸骨が這い出してきた。
骸骨たちは剣と盾を持ち、バックルに赤・緑・青の石を埋め込んでいた。先にいくほど刀身が太くなる剣は、骸骨により長さが異なり。丸い軽量型の盾に、見たことない文字が彫り込まれていた。
「歓迎……してくれないか」
骸骨の剣士たちが徐々に京也との距離を詰めてくる。
動作は遅いが、頭部の窪んだ眼光は、京也の動きをマークし逃がさない。
多すぎた。目につくだけで数十体はいる。危機を回避するために京也が能力を使う。
「発動」
2秒後に何かにぶつかった。
空中でバランスを崩した京也が落下する。緑のブレスレットがクッションシートへ変った。尻餅をつく京也に、複数の骸骨剣士が襲いくる。
「発動・1・止まれ」
直進した京也の手には、シートから姿を変えた長柄コルセスカが握られていた。コルセスカは、出現と同時に三体の骸骨を貫いていた。ズシリと感じる重量。京也は長さ2.5メートルの三叉槍を両手でしっかり支えた。
体が反応する。
刺突を抜くと京也の背後にいた骸骨たちが、石突きで倒れる音が聞こえてきた。素早く腰にコルセスカを当て京也が回転する。周囲の骸骨をなぎ倒していった。円周上の敵がいなくなると、京也が階段をイメージした。
だが、特定の範囲から階段が先へ伸びてはくれない。ガラス瓶の容器の中に閉じ込められているように、周囲を遮断する壁が砂漠に存在していた。
倒れた骸骨たちが起き上がってきた。生命を感じさせない骸骨は、ただ京也に向かってくる。きりがなかった。
仕方なく京也は、わずかな隙間を見つけ走った。走りながらコルセスカを地面に突きさし、反発力を使い高く飛び上る。しなやかに曲がるコルセスカを操る京也が、骸骨たちを超えていく。遠方に着地すると同時に、京也の腕にブレスレットが輝いた。
「発動×150」
京也は上空から見た敵の位置を正確に思い出しながら、骸骨たちを取り囲むように能力を発動し続ける。砂の障壁が骸骨の囲い込みに成功した。
「閉じ込めた」
京也は砂漠に両手をつき倒れ込む。
時間稼ぎはできたが、根本的な解決はできていなかった。倒しても起き上ってくる骸骨たち。コルセスカは素晴らし武器だったが、長時間の使用に京也の体がもちそうもなかった。武器の性能に対して、体が順応できていない。暑さのせいで体力の消耗も著しかった。
砂から伝わる熱さに、思わず京也が手を見た。プロミスリング。「ミミ。どうして」考える京也に、こずえの声が響く。
『ミミがあなたに渡してくれと』
『実態のない悪霊や亡霊を殺すのはかなり難しいと思う』
『一番確実な方法は呼び出した召喚者を殺すこと』
「召喚者を殺すこと」
呟く京也の汗が落ち、砂上に吸収されていく。あれだけの骸骨を操るには、近くで術を使用する必要があるはず。砂上に隠れる所はない。
だとしたら。おそらく骸骨の剣士の中に、術者が紛れ込んでいるのではないだろうか?
見つける方法は?
考えがまとまらないまま。
砂の障壁が消え、骸骨の剣士たちが京也に忍び寄ってきた。




