025
「見事じゃ……」
「よし、試練はクリア」
ワスレは聞こえなかったことにした。
「目が回るとは、ああいうことを言うのだな。愉快、愉快」
小さなボールサイズに戻ったワスレが跳ねながら京也の周りを回る。よほどうれしいのか止まろうとはしない。超高速回転の余韻が残る京也はだんだんうっとうしくなってきた。
「もう十分でしょう!」
「愉―快、愉―快」
「運命を断ち切って下さい」
「無―理、無―理」
回転は止まらない。
京也は聞き間違いだと思った。能力を限界まで使い大剣に挑んだ過酷な試練。ヒントはもらったが自力でクリアした。疲れているからだ。仮にも柱の審判を務めるものが約束を破るはずがない。
「ワスレさん、お願いします」
「無―理、無―理」
怒りを込めた京也の右足が鋭く振りぬかれた。叫ぶことをやめないワスレがクリスタルに直撃する。跳ね返ってきたワスレを受け止めた。
「だましたな」
京也がワスレの首を掴む。
正確に言うと首らしい部分を掴む。
「落ちつけ、試練を受けろとは言ったが、運命を断ち切るとは言ってないぞ」
火に油を注ぐワスレ。
「運命を断ち切ることはできん。断ち切ったところで新たな運命が生まれるだけじゃ!!!」
「どういうこと」
ボールを離すと京也は砂の上に座り込む。
「緑の柱には、何百、いや何千、もうちょっとあるかの。無数の部屋がある。中には望む部屋があり運命を断ち切ることができるかもしれん。だが、その部屋に出会える確率はどれくらいかの。運よく出会えても、次の運命がはじまる。運命とはそんなものじゃ」
「どうすればいいのさ」
「運命に逃げることなく立ち向かう方法を知ればいい。お主は合格じゃ」
「無―理」と跳ね回る前に言ってくれればいいのにと京也は思った。
「どこにいく、話は終わってないぞ」
運命を断ち切ることはできなかったが大切なことを教わった。それで十分だった。
「ありがとうございます」
「持ってゆけ」
膨れあがったワスレの体から卵が飛び出した。卵はキャッチしようとすると京也の指を突き抜けて手首にすっぽりと収まる。
「「緑のブレスレット」 運命に逃げ出さず立ち向かうならお主の武器になるはずじゃ」
京也はもう一度お礼を言うと壁に歩き出した。
見送るワスレは思う。滝本京也の運命の大きさに。部屋に収まり切らない「死」を背負い、これからどう道を進んでいくか。壁の前で手を振る京也が見えた。「諦めず立ち向かってきた滝本京也なら運命を乗り越えられるはずじゃ」ワスレは確信した。
「ワスレーーー。出口どこだっけ」
「前言撤回じゃ、馬鹿者」




