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柱の内部は想像していたものとかなり違っていた。金属製のパネルが複数並び楓に言われるままパネルの前に立つと側面から緑色の光が当てられる。足もとから順番に上がってくる光は、チップの情報を読みこみつつ細胞情報を隈なくスキャンしていた。
画面には見たこともない文字や数字が並び上方にスクロールされては消えてゆく。光に満ちとても明るい内部は、外で見た緑の柱の印象とかなり異なっている。情報から運命を読み取っているのか、それとも単に試練のためのメディカルチェックなのか、京也には分からなかったが、楓が無言のまま立っている姿を見て当然の手続きであることだけは察しがついた。
「ピイ・ピイ・ピ」奇妙な音がした後、画面に読めない文字が再び浮かぶ。楓が画面に触れると京也にも理解できる文字に変換された。
審判の内容を選択してください。
1.運命を知る
2.運命を断つ
3.その他
京也が「その他」は何か楓に聞こうとすると、迷うことなく楓は「2」を選択していた。
誰が審判を受けますか。
1.本人
2.代理人
3.その他
楓が「1」を選ぶ。
あなたは能力者ですか
1.はい
2.いいえ
2を選ぼうとした楓に、能力者である旨を京也が伝える。「まさか!」と驚いた顔を見せたが「1」を選んでくれた。その後いくつか質問がでてきたが楓が勝手に選んでいくので京也は画面を追っていくことをやめてしまった。やがて楓が全ての質問に完答すると、地面がゆっくりとスライドして地下へ続く入口が出現した。
「私はここまでだ。入口を進むと試練の間があるはず。審判を受けるものによって内容が異なるが詳しいことは私も知らない」
入口から地下に続く階段の先は暗く、かなり奥まで続いている。
「さっきは驚いたふりをして悪かったな。能力があるのは知っていた。お前のことは生徒会の命令でずっと監視していた」
どこかさみしげに話す楓が京也と重なる。能力を欲しても手に入らず、他人の能力獲得ばかり目にしてきた日々。その度に何度ペンダントを握ってきたかしれない。
「翔先輩にあこがれていた」
「兄さんに?」
「ああ、私が見てきた中で最高の能力者。彼のようになりたい。それがダメならせめて傍にいたいといつも思っていた。響家は君主に使え命を捧げる家系だからな」
「兄さんと話したことは」
「ないな、いつもたくさんの人に囲まれていた」
「そうですか」
「あんなことが無ければ……」
楓が言葉を濁す。3年前の事件が思い出された。
「遠いな……何もかも届かない……」
京也は楓の奥底にある叫びを聞き心が締め付けられた。
気持が痛いほどわかった。「この人は僕と同じ」だから……。
京也は、首からペンダントを外すと楓に差出す。
「兄さんが僕にくれたものです。能力を得るためのお守り」
突然の申し入れに楓はペンダントをただ見つめていた。
「楓さんに持っていてもらいたい」
「なぜ?」
「僕にはもう必要なくなったから……それに兄さんも喜ぶと思う」
楓はペンダントを黙って受けとった。
能力獲得には限界年齢と呼ばれるものがある。14歳を過ぎると能力獲得はほぼ不可能とされる基準。楓は知っていたが、京也の気持ちがうれしかった。ペンダントの真ん中で無色の石が何色にも染まらず輝いている。
「発動」
京也はそう言い残し階段へ飛び込んでいった。




