013
後悔が京也の胸を押しつぶす。ミミに助けを呼ばなければよかった。悔やんでもミミはかえって来ない。わかっていたが京也は考えずにはいられなかった。ミミの葬儀にも参列せず。学園にも行かず3週間が過ぎようとしていた。
「京也、そろそろ学園にこいよ」
魔道具であふれた部屋に、心配して顔を出した圭介がこずえを連れて現れた。京也は返事もせず、座り込んだまま動こうとしない。
「今日は、恋愛解除の審判があるぜ。ミス学園と留学生、どうでもいいが、授業も潰れるし気分転換にどこか出かけないか。閉じこもってばかりじゃ体に悪いし」
こずえが自動ブラインドボタンを押すとブラインドが上がり、窓が左右に開く。部屋に日が差し込み京也の顔を照らすと、眩しさに目を開けた京也が初めてふたりの存在に気が付いた。
「どこにいく京也。久しぶりにキュービックホールにでも行くか」
「……」
「俺が連れて行ってやるから」
触れようとする圭介の手を京也は払いのけた。
「何が楽しんだ。ミミは死んだのに……なんでへらへら笑えるんだ」
京也が起き上がり胸を押すと、かわすことなく圭介はよろけながら魔道具の中に倒れ込んだ。
「責めればいいだろう。ミミを殺したのは僕だと」
「お前は責めればいいのか京也……それでミミは喜ぶと思うか? ミミがどんな気持ちでお前を助けたと思っている」
「やめて、ふたりとも。そんな話をするために来たんじゃないでしょ」
「なんでミミはお前なんかのために……」
「やっと本心が出たな圭介。いいたいことを言えばいい」
圭介は目を合わせることなく天井を見上げると能力を発動させた。
「移動」
「逃げるのか圭介」
「いい加減にして!」
怒りをあらわにしたこずえが京也に透明なボールを投げつけた。ボールが京也の肩に当たると、赤・緑・青の刺繍糸を何本も組み合わせたプロミスリングが中から弾け飛んだ。
「ミミがあなたに渡してくれと頼んだ物。一生懸命作っていた。それを横でいつも圭介くんは見ていた。どんな気持ちで見ていたかわかる?」
プロミスリングを京也がさわろうとするとこずえはそれを奪い取った。
「あなたにその資格はない。圭介くんは仮面の男を今も捜し続けている。私もいろんな文献をあたって手がかり探している。みんな悲しいの。でもあなたみたいにいつまでもふさぎ込んで、辛い気持を誰かにぶつけてどうにかしようなんて考えてない」
こずえが出ていくと涙があふれた。
京也はミミだけでなく圭介まで失ってしまった。