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誰よりも早く階段を上り僕は君に逢う  作者: T-99
三本の柱:緑~運命編
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010

 家まで続く道を歩きながらふと立ち止まる。誰かに呼ばれた気がした。京也は30階建のスプラウトビルを見上げ、昨夜のことを思い出した。

 能力を確かめるべく階段を何度も上り下りした建物。商業用テナントも多くあるせいか、構造上各フロアーを広くとっている。出入り口は東西南北すべてに設けられ、北口は商業用の搬入通路で業者の出入り以外、人の出入りはほとんどなかった。

 誘われるようにビルに入り、エメラルドグリーンの非常扉を開け屋上に上がると、魔法学園の三本の柱が目に飛び込んでくる。昨夜と同じ景色。ただひとつ違うところは、黒い仮面をつけ長いローブを羽織った男が屋上の中央にいたこと。風がぬけると扉付近まで異臭がした。男が呼吸するたびに空気が紫色に濁っていく。ローブの上でクロスさせた腕には、刃渡り1mほどの剣。剣に柄はなく腕と一体化していた。

「ブーフー」

 黒い仮面から不気味な呼吸音が漏れる。京也は気づかれないよう後退した。非常口まで数歩。間合いを測りながら慎重に男から遠ざかる。扉に手を触れようとした瞬間、右腕に血線が引かれた。男の両腕から伸びた剣が扉を貫通していた。剣が縮まる反動でエメラルドグリーンの扉が開かれた。

「ブーフー」

 呼吸音。

 階段は見えている。

 決断するしかない。

 京也は飛び込んだ。

 能力を発動させ1階へ飛び込み前転を決めると、北口通路をぬけ通りに出た。

「ミミ、聞こえるか?」

 通りに人の姿はなく京也の声だけがこだまする。

『京ちゃん? どうしたの』

『黒い仮面の男に……』

「ブーフー」

 呼吸音。

 地面から黒い仮面の男が浮上した。

 京也の喉もとに向けられた剣から逃れる術はない。

 万事休す。

 ペンダントを京也は握りしめた。

「捕まれ、京也」

 諦めかけた京也の腕を圭介が掴んだ。

 京也のいたはずの場所から素早く剣先が胸の位置に戻ると、仮面の男は再び地面へと体を沈めていった。







 


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