season2-3 月面にて
映像の再生と共に、美奈の翻訳が始まった。
「ニート船長、彼らがいます」
「うむ……」
映像には暗い空が映っている。星などまったく見えない暗い空。そんな先になにやら光る物体が地面に着陸している。それは軽い光りを発し、三人の男性の足元を照らしているようだった。
光る物体の前には三人の人間の姿をした生物が立っていた。拓也と美奈は映像を見て一瞬宇宙人かと思ったがその顔は地球人そっくりだった。
「例のものを持ってきた」
アームストロング船長が言いながら、なにかを持っている手を差し出した。光る物体の前に立っている三人は無言でそのなにかを受け取った。ものすごいスローペースで動く手。手の数は六本。六本?美奈はそれに気が付いた瞬間映像を止めた。
「ちょっとなにこれ!?」
美奈の歓喜にもにた声が部屋に響く。映像をよく見ると、顔こそ地球の人間そっくりだが、頭に毛はなく、指はみんな六本ある上に、三人とも締め付けられそうなくらいピッチリとした服を着ている。再び映像が再生された。
無言のその男達はなにかを受け取った後、光りに包まれ消えていった。その直後、光る物体はゆっくり地面の中へと消えていった。
「任務完了だ。地球に帰還だ。オルドリン」
「はい」
そこで映像は切れた。
拓也も美奈も声が出ず静寂に包まれる。今の謎の映像にどうコメントしてよいのか言葉が見つからなかったのだろう。しかしその静寂は美奈が破った。
「本物よ……。間違いないわ」
「え?」
「これが本物の月面着陸映像なのよ! 私達が見ていたのは全部スタジオで撮影された偽者だったのよ。それで合点がいくわ」
美奈はとても興奮している。それを拓也は驚きの表情で見ている。
「よく聞きなさい。アポロ計画のアポロ11号で紛れもなく人類は月に行ってるのよ。でも月の映像は公開するわけにはいかなかった。とは言っても当時アメリカはソ連と宇宙開発競争の真っ只中。そんなときに月への有人飛行を成功させたのに映像がなければなにも証拠が残らない。だから精密なスタジオのセットで映像を撮影したのよ。一般公開用にね」
「月には彼らがいるのよ! そう異星人が、だから映像は公開できない。きっといまの六本指の生物がそうなのよ」
なるほどと言わんばかりに拓也は うなずく。
「となると、アメリカが隠した映像の中に隠されているヒント。それが月の謎を解く鍵になるわ。まず、アームストロング船長がもっていて、彼らに渡したなにか。そして、六本指の彼らと光る物体、一番の疑問は全員がヘルメットをしていなかったこと。まるで月に空気があるかのようだった」
これは徹底的に調べる価値があると判断したのか美奈の目は感動で満ちている。拓也はそんな美奈を見て、自分が探している答えに繋がるのではないかと期待を高めていた。
「あ、美奈さん」
美奈の顔が不機嫌に戻った。どうやら拓也に呼ばれるのが好きじゃないらしい。
「なに?」
素っ気無い冷たい態度で返事をする。
「もしかしてこのDVDの持ち主じゃないですか?」
そういいながら拓也は人指し指をある方向へと向けた。
そこにはサングラスをかけた茶髪と金髪が入り混じったような髪をした顔立ちの整った男がタバコを吸いながら立っていた。