season17-1 果て
――そこは、白い空間。
なにもなく、静寂でなにも感じることは出来ない。言葉も気持ちも全てが無。
それなのに全てが、見透かされているような、そんな透き通った感覚だけが宿っている。まるで宇宙の一部となったかのような。
そんな空間で拓也は目覚めた。
「ここは……」
目覚めた拓也は辺りを見回す。そこはなにもない白い空間。周りには誰もいない。ただ一人の人間だけが存在する。
「おれは、死んだのか?」
そう思うのも無理はない。なにもなく、感覚も乏しい。全てが透明な場所にいるのだから。だが、拓也はそれと同時に自分に息づく鼓動も感じていた。それは確かに生きている感覚。
『あなたは死んだわけではありません』
どこからともなく、『声』が聴こえてくる。それは直接頭に、心に、気持ちに聴こえてくる不思議な声。拓也はその声の主を探した。
『探しても私を見つけることはできません。私は実態のない意識体なのですから』
「意識体? ここは、どこなんですか?」
『……果て。あなた方が宇宙の果てと呼ぶところです』
「宇宙の……果て。なんで、そんなところに」
『私にもわかりません。いままで何百億年と生きてきてこの場所に来たのはあなたがはじめてですから』
「何百億年? それって……」
『そう、あなた方の宇宙が生まれるずっと昔。その遥か以前から、私はここでこうして、あなた方の宇宙を見てきました。御覧なさい』
意識体はそう言うと、拓也の目の前にいくつもの黒く丸い物体を表示させた。拓也はその黒い物体を見る。
「これは……宇宙?」
『そうです。それら一つ一つは、一個の宇宙なのです。最初は、もっと多くの宇宙があった。今は、当時の数の半分以下まで減っています』
「それはどういう?」
『滅んでいるのです。今もホラ……』
そういうと拓也の前にあった一つの宇宙が突然ゆっくりと静かに消えた。
「そんな……。それじゃあ今の二倍以上あった宇宙全てが滅んだというんですか?」
『そうです。そして、あなた方が住まう宇宙も今のままではいずれ滅びるときがきます』
拓也はその言葉に驚きの表情を浮かべた。