season15-4 拉致
「ところでなんでイヴはここにいるんだ? ここは敵の本拠地だろ?」
レンはイヴに疑問をぶつけた。
「簡単なことです。あなた達の星の言葉で言えば灯台下暗しというやつです。敵もまさか自分達が探している者が自分達に最も近い場所にいるとは思わないはずですから。その証拠に地球までわざわざアダムを抹殺に行ってます。彼らにしてみれば、私かアダム。どちらか一方が消えればいいのです」
「なるほど。それで俺達が狙われたわけか」
「あなた達には本当に申し訳ないと思っています。でもおかげで我々も戦闘の準備が整いました。必要な情報は全面的にレトに聞いてください。彼は熟知しているので。これから、レトについて行って武器などの説明を受けてください」
そう言われた拓也達はレトの後をついていき、さらに奥の部屋へと入っていった。そして部屋にはイヴ一人が残った。
「彼がアダム。やっと会えた。これで私達は未来へと希望を繋げることが出来る」
イヴは独り言をつぶやくと椅子へと座った。
『お疲れだな。イヴよ』
その声に驚いたイヴは椅子から立ち上がり、声の主を確かめようと辺りを見渡す。しかしそこにはなんの姿もない。イヴが、呼吸を整えようと一息ついたその刹那、イヴの上から黒い網のようなものが振ってきた。それは粘液のようなものでイヴの身体から自由を奪った。
『もがけばもがくほどそれはお前に絡まるぞ。イヴよ』
するとイヴの背後から声が聴こえた。イヴは、後ろを振り返る。そこには、黒をベースとした人間よりも爬虫類に近い形をした生物が立っていた。
「レ、レプタリアン……! なぜここが」
『後をつけてきただけさ。あの二機はおとりだったのだ。お前達の居場所を探るためのな。まさか本当に火星にいたとは驚きだがな。とにかくこれでお前は捕らえた。一緒に来てもらうぞ』
そう言うと、イヴの身体に絡まっている粘液なようなものを引っ張りイヴごと連れて行こうとした。
「イヴ……、レトが呼んできてくれって」
そこにイヴを呼びにきた拓也が現れた。拓也はその状況を見て驚く。
「な! なんだおまえは!?」
『アダムか。これはいい。お前も一緒に連れて行ってやろう』
「アダム! 逃げなさい! あなたの、地球人の肉体ではこいつらには勝てません。私なら大丈夫。今は逃げることだけを考えるのです」
「で、でも……」
拓也はイヴの言葉を聞いて戸惑っていた。目の前にいるのは見たこともない得体の知れない生物。足もすくむし、なにがおきているのか理解にも苦しむ。
「アダム、あなたまで失ってしまっては我々がレプタリアンに勝つ全ての手段が失われてしまう。悔しいのは分かります。でもここは逃げてください。未来に希望を繋げるために」
『俺達に勝つ? それこそ無駄な話だ。面倒だ。今ここで殺してやるよ』
「アダム!」
イヴの声に拓也は少し後ろに足を引いた。そして、足元にあるスイッチを足で踏んで押した。その瞬間轟音と共に拓也の前に銀色の分厚い壁が競りあがってきた。
『むっ! なんだ?』
「これは鉄壁の防御。これであなたは今アダムに手を出すことはできない。さぁ連れて行くのなら私だけ連れて行きなさい」
『ふん、まぁいいさ。お前がいれば十分だ』
そう言うと、レプタリアンはイヴを担ぎ上げ、人間離れした跳躍力で自身が用意していた。航空機へと乗り込んだ。そして、その航空機で他の航空機と一緒に遥か遠くへと飛び去っていった。