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season2-2 月

 再生したDVDには宇宙服のようなものを着た三人の男性が写っていた。全員ヘルメットはかぶっていない。なにやら三人が輪になって立ち話しをしている。三人のうち一人は手に何かを持っていた。


 映像が始まると同時に美奈の翻訳が始まった。映像は多少乱れていてそれほど綺麗ではないものの、映っているものははっきり見える。美奈は同時翻訳しようとしたが思わず口をつむぐ。映像に映っている三人の男性のうち一人の顔に見覚えがあったからだ。美奈にはそれが誰であるかがわかっていた。


 そこに映っていたのはアメリカのアポロ計画のアポロ11号に搭乗し人類で始めて月に降り立ったニール・アームストロング船長の姿だったのだ。


 拓也は映像を見ながら美奈が翻訳を始めないことに疑問を持っていたが、英語が分かるなどという負け惜しみの嘘をついたため引き下がることが出来ず、どう謝ればいいのか考えているのだと思い、気にするなと言おうと喉まで声がでかけたときに美奈の翻訳が始まった。


「ニール船長、準備が整いました」


三人の中で一番身長の高い男が言った。


「それではいくか」


 先ほど手に何か持っていたのはアームストロング船長だった。三人はヘルメットをかぶらずにドアの前に立ちドアの右側にあるボタンを押した。ドアが静かにあまり音も立てずに開く。ドアの開いた先は真っ暗闇が広がっていた。微かに見える地面は砂で敷き詰められたようになっており、所々、でこぼこしている。まるで岩の砂漠に立っているみたいだった。先頭に立つアームストロング船長が一歩外へ足を踏み出し言う。


「これが本当の人類にとっての始めての月への一歩だな」


「そうですね、スタジオのセットなどではない本当の一歩ですね。さぁ彼らが待っています。いきましょう」


美奈はこの翻訳を終えたとき、DVDの再生を一時停止し、驚きの表情で言った。


「たっくん……、聞いたよね?」


「はい、聞きました」


 拓也も今度は勘違いではなくほんとに気が付いたようだ。美奈がいつもの顔とは比べ物にならないほどの真剣な顔付きで言う。


「本当の人類にとっての一歩ってどういうことかしら? いま映ってるこの場所は月ってこと? 私がテレビで見た映像とは全然違うわ。スタジオのセットってどういうこと?」


 美奈は率直に思った疑問を淡々と並べた。拓也も疑問の顔を浮かべている。


「前にテレビで見たことがあるわ。月面着陸は嘘だったとかいう……」


「スタジオで撮られた映像だとか、大気のない月面で旗が揺れていたとかそういうことを言ってた。いま私達が見ている映像が本物だとしたら、本当にいままで私達が信じてた月面着陸への映像がすべて偽者ということに……」


「どっちが本当なんでしょうか?」


 拓也が疑問をぶつける。


「……アポロは月へ行った……、でも映像は偽者だったのかも知れないわ。スタジオで撮影された偽者……」


「え? なんでそんなことを?」


 拓也はまた疑問をぶつけた。


「私が知るわけないでしょ。馬鹿。すこしは自分でも考えなさいよ」


 そういうと美奈は再びDVDを再生した。


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