season15-1 火星での攻防1
宇宙空間で激しい爆発が起こる。宇宙空間は真空のため船内の空気を吸い込みつくした炎は一瞬にして消え去る。その隙間から一機の小型の航空機が飛び出した。拓也たちの乗っている航空機だ。もの凄いスピードで回転しながら火星目掛けて飛んでいく。
一方巨大で真っ黒な宇宙船からも二機の小型の航空機が拓也たちの乗っている航空機の後を追うように飛び出してきた。拓也たちの航空機はそのままの不安定のバランスのまま火星の大気圏に突入する。
「おい! この体勢はやばくないか!?」
中にいる拓也達はその航空機の原理から抵抗を受けていないため平気ではあるが、航空機自体は飛んでいるというよりも落ちているという表現のほうがはるかに近い。しかも後ろには二機の敵の航空機が追って来ている。今のままの体勢では大気の熱にやられて航空機は燃え尽きてしまう。
「いま体勢を整えます」
拓也達の航空機は大気との摩擦により煙を上げ始めた。その後ろの航空機もその煙の間を抜けて拓也達に接近する。激しい摩擦音が唸っている。
レトは必死に体勢を整えようとしているがなかなかうまくいかない。爆発の衝撃でバランスを大幅に崩してしまったようだ。航空機は煙をあげてはいるもののなんとか大気圏を抜けた。しかしあまりのスピードとバランスを保ててないため今のままでは地面に激突してしまう。
「くそ、あがれー!」
レトは操縦桿を必死にひっぱている。しかし航空機はバランスを崩したままものすごいスピードで地面目掛けて飛んでいる。その時操縦桿をレンが握った。レトとレンは二人で操縦桿を引っ張る。地面はもう真近。
「あがれー!」
二人で持つ操縦桿が引っ張られ航空機は地面ぎりぎりで、水平飛行の体勢になった。地面すれすれを飛んでいる航空機の後を敵の航空機が追っている。
「やった。なんとか体勢を整えたぞ」
「でも、まだ後ろから二機の航空機が追ってきてるよ」
「体勢さえ整えばなんとか逃げ切ってみせますよ」
そう言うとレトはそのままのもの凄いスピードのまま火星の大地の間にある谷へと航空機を移動させる。
それは火星の巨大はクレパスで大地が裂けているように深い谷だった。レトはその間に航空機をすべりこませた。そこはかなりのテクニックがないと壁に激突してしまうような入り組んだ谷で、レトの作戦はその地形を利用して二機の航空機をまく作戦のようだ。
レトは航空機をうまく操り、クレパスの間を上手に抜けていく。とんでもないスピードにも関わらず谷にぶつかることもなく。しかし、後ろからついてきている二機もまた、谷の間をうまくすり抜け徐々にその差をつめようとしていた。
しかも、突然、緑色のレーザーのようなものを複数打ち込んできた。二機は互いに入り乱れながらもうまくぶつからないように操縦し、なおかつレーザーで拓也達の乗る航空機めがけて攻撃を仕掛けてきたのだ。
「奴ら、攻撃までしてきやがった。やばくないか?」
レンの心配は的中していた。ただ逃げるだけのこの状況下で二対一。しかもスピードは向こうのほうが上。谷を避けながら敵の攻撃も避けなければならない。
「くそ、このままじゃ」
「レト、私に作戦があるわ」
それまでただ状況を観察していた美奈がレトに提案した。そしてレトたちにその作戦を話した。
「ちょっと待ってください。それは危険すぎます。私はなんとしてもアダムをイヴのもとへ送り届けねばならない」
「でも、このままじゃいずれやられるわよ。私達が助かる道はこの方法しかないのよ」
レトは少し沈黙し、考えている。その間にも敵は攻撃の手を休めない。
「……わかりました。やってみます」
レトは決意をした。敵の二機から逃げ切るために拓也をイヴという者のところへ連れて行くために。
読んでいただきありがとうございます。
今回よりseason15が始まります。どうぞよろしく。