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season13-4 周回軌道

「全員席へ着いてメットを装着、そして各自ベルトで座席に固定してくれ」


 ベルリクトの指示で拓也達は全員自分の身体を座席へと固定する。


「いよいよか」


 ベルリクトともう一人の操縦士はシャトル前面のスイッチなどをいろいろ弄っている。今回の作戦は特殊な形態を取っている。それは地球との交信の遮断。とはいっても生体データーなどは特殊な暗号に変換して送信はしているが、音声による通信は一切ない。


 というのもこの作戦自体が極秘で盗聴のおそれがあるためで、通信が出来ない状態となっているのだ。そのため現場では地上からの指示なしで動く必要がある。そのためベルリクトの責任による部分が異常なほどに大きい、ベルリクト自身もこのような事態は初めてだった。いくらNASAや軍隊で培った技術や精神力があれどもこれほど重い任務はない。


 つまりベルリクト自身も多少の不安を持っていた。それでもそんな不安を拓也達に見せないようにがんばっていた。


 シャトルの窓からはすでに月が映っている。シャトルは月の重力圏に入り、最初の難関に乗りかかった。


「全員準備はいいか?」


 ベルリクトの言葉に全員が返事をする。


「それでは今より、超高速飛行に入る。3、2、1……」


 カウントダウンが終わると共にベルリクトは自分の席の前にあるスイッチを押した。


 その瞬間、シャトルの後部にある噴出口から打ち上げの時よりも大量の熱源とエネルギーが噴出され、シャトルは一気に加速した。シャトルは徐々にスピードを上げて月の周回軌道へと乗る。月よりも離れず着かずで月の周りを回り目的地である月の裏側に到着するためだ。


 シャトル内の拓也達はその脅威的なスピードにより押しつぶされそうになっていた。訓練と実践での違いに驚きを感じながら必死に耐えていた。予想以上の重力と揺れも重なっている。


「な、なんて早さだ!」


 それは拓也の声だった。


「がんばれ! もう少し耐えるんだ」


 レンの声も機内に聞こえる。


 現在のスピードは時速28000キロ。もの凄いスピードで月の周りを回っていく。もうすでに地球ですら遥か遠く、地球の姿もほとんど見えない状態となっていた。つまりもう月の裏側へと到達しかけているということだ。


 シャトルの後部の噴出口の勢いも徐々に衰えてきた。機体の揺れも少しずつ収まってきて安定してきた。


 スピードも通常時に戻ってきて、拓也達も落ち着きを取り戻してきた。


「ふぅー、美奈さん、レン大丈夫?」


「当たり前じゃない。たっくんよりも耐えれる自信はあったわ」


「俺も……」


 拓也は二人の姿を確認した。全員がこの驚異的なスピードに耐え切り難関を乗り越えたのだ。


 そして拓也は窓の外を見る。そこには月の裏側が映し出されていた。


 もう地球の姿は見えない。見えるのはこれから降り立つ月の裏側だけだった。


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