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season12-2 美奈の過去

「物心がついたころには私の両親は死んでたの。だから私は両親の記憶はない。あるのは両親の顔写真だけ。つまり私は生まれたときから孤児みたいなものよ。そんな私を育ててくれたのが元NSAの長官だった」


 美奈の顔は少し悲しげな表情を見せた。拓也は美奈さんもこんな顔をするんだと思っただろう。


「彼は私にいろいろ教えてくれたわ。この世界の政治のことや宗教のこと、いろんな国の言葉まで。今で言う英才教育ってやつね。彼は元々私をNSAにするつもりだったみたいなの。いろんな勉強はすごく厳しかったし大変だったけど彼はとてもやさしくて暖かい人だった。でも、あの夜全てが変わった」


「え?」


 拓也は美奈のその言葉に思わず疑問符を言葉にした。


「私が見たのは、彼の死んだ姿だった。眉間から撃ったであろう弾が反対側の頭から出ていた。彼の手には銃が握られていて警察は自殺だと判断した」


「自殺……」


「でも、私は自殺だなんて信じられない。確かに長官という仕事は大変だけど彼は自殺なんてするような人じゃなかった。だから私は自分でいままで彼に教えられていた知識で彼の死の原因を調べ始めたの」


「……ちょっと、待って美奈さんがそのNSAの長官の死の原因を調べようとしてるのは分かったけど、なんでいきなりNSAの長官に育てられてるの?」


「普通その手の疑問って話始めた頃にするものじゃないの? 馬鹿もここまでくると表彰ものね」


「ごめんなんさい」


 拓也は美奈のけなしに謝るしかなかった。


「私の両親は、父親はアメリカの研究者、母親は日本人でNSAの人間だったのよ。つまり私の国籍はアメリカ合衆国。それで長官とも知り合いだったみたいなの。長官は独身できっと両親の良き親友だったのかも知れないわ」


「え? じゃあ美奈さんはハーフ?」


「だからそう言ってるじゃない。馬鹿。話を戻すわよ。とにかく育ての親である長官の死の原因を調べてるうちにあることが分かったの」


「あること?」


 拓也はつばを飲み込んだ。


「それが、長官がある資料を持っていたこと。その資料に書かれていたこと。それが『プリンズ・レポート』という名前がつけられた国家最高機密のレポートだったの。その内容は異性人の存在と彼らのテクノロジーの核が書かれたものだったらしいの」


「それって」


「今にして思えば長官はそれを手にしたことで政府の人間に殺されたのかも知れないわね。証拠なんてないけど。まぁそんなこんなで私は異性人の存在を調べ、レイラと知り合いレイラからアダムのことを聞き、たっくんと出会った」


「そっか。美奈さんもいろいろあったんだね」


 拓也は美奈のこの性格も美奈の辛い自分の過去に打ち勝つために出来たもののような気がしてきていた。


「美奈さん……あまり無理はしないでね。美奈さん一人頑張らなくても俺達仲間がいるんだから」


 拓也はこれでもかって言うほどの笑顔で美奈に言って見せた。


「たっくん……」


 美奈も少し微笑む。


「喉が渇いた。なんかスポーツ飲料買ってきて」


 拓也の笑顔は消えた。拓也は最初会った頃にも同じようなことがあった気がしていた。拓也はベンチから立ち上がり飲み物を買いにいこうとした。


「待って!」


 美奈の呼びかけに拓也は振り返る。


「もちろんおごりね」


「……はい」


 拓也は思った。美奈さんはなにも変わらないと。でもそれは間違いなく拓也にとって安心感を与える美奈の行動だった。それを思った拓也は美奈に分からないように静かに微笑んだ。


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