season11-3 真実3
水素爆弾――。
それは核融合を利用した核爆弾の一種で一般的には水爆と呼ばれている。原子爆弾を雷管代わりに使用し、重水素などの核融合を誘発し膨大なエネルギーを放出する。その威力は広島形原子爆弾の数千倍と言われ、7つあれば地球を粉々に破壊できるとまで言われた人類が開発した最大威力の爆弾である。
しかし、そんな水素爆弾にも欠点がある。それは、その反応速度の遅さと、構造上威力を上げる為にはどうしても巨大なものになってしまうということ。そのため実用的ではなく現代では小型化に成功したウランやプルトニウムを利用して核融合する核兵器が基本である。
その水素爆弾ではあるが、過去に一度だけ地下や海中実験ではなく、実際に旧ソ連の爆撃機に搭載され投下されたことがある。|(実戦ではなく実験により)その爆弾は地上約4000Mで炸裂し爆発による衝撃波が地球を3周したと言われている。その時の水素爆弾の大きさは長さ8M、直径2M、重さ27トンにも及び火薬量は50メガトン。広島型原子爆弾の約3300倍にも相当する。|(1メガトンは1000キロトン、TNT爆弾100万トンにもなる。ちなみに広島に投下された原子爆弾は僅か15キロトンである。さらに50メガトンの威力は太陽の表面で起きる水素爆発一発分に相当する。つまり地球上で太陽の光源を発生させたのと同じ)
拓也は水素爆弾についての一通りの説明を受けた。拓也がそのすべてを理解できたわけではないが水素爆弾の恐ろしさは十分に理解した。
「そ、そんなものをどうするつもりなんだ?」
「……だが我々はさらに巨大な水素爆弾を製作した。水素爆弾は構造上どうしても莫大な時間と莫大な経費がかかる。だから数十年もかけて密かに作り続けてきたのだ。その爆弾の長さは約8000Mにもなり直径は約2000Mにも及び、その総重量は約27000トン、火薬量は約50000メガトン。広島型原爆の約330万倍の威力を持っている。コードネームは『イワン』。爆弾の王と呼ばれた水素爆弾とまったく同じ名前だ」
「うそだろ? そんなの……。一体どこに? いや、それ以前になんでそんな巨大なものを?」
拓也の表情はもはや驚きを超えて恐怖に近いものになっている。
「そこで役にたったのが異性人の持つテクノロジーだ。彼らの持つ半重力浮遊と不可視の技術を使い、爆弾自体を空中に浮遊させ、レーダーにも人の目にも映らぬようにした。爆弾の設置場所は、絶対に上空を犯すことにできない領空それは限られている。そして、その場所はエリア51に決定された。つまり現在エリア51の上空には地球を一撃で破壊するほどの威力を持つ爆弾が浮かんでいるということだ」
「そんな……」
「だから隠す必要があった。一歩間違えれば地球が消滅するそんな巨大な爆弾を作っていることが国民にばれれば大混乱が生じる、さらに他国への挑発の意となり三次世界大戦にも発展しかねん。それだけにこの計画には慎重に慎重を重ね行動してきた。そのため異性人の存在も隠してきたのだ。異性人の存在がばれれば、人は彼らのテクノロジーに興味を持つ、そうなれば不可視の構造にも興味を持つ、そして人はすぐにその不可視を破る技術を開発する。そうなればこのイワンがばれるのも時間の問題だ」
「それが……真実」
「そうだ、異性人に対抗する最終手段それが我々が長年隠してきた真実だ」
「俺には、大きすぎて理解できない領域だ」
拓也は、理解に苦しむ顔をしているが、真剣な表情は崩さない。それは真実を聞いた拓也の心の現われなのだろうか。
「まだ、わからないことがある」
拓也はなにかを思い出したかのように言う。
「そんな巨大な爆弾を使うにしても地球では使わないだろ? それにその異性人ってどんなやつなんだ?」
「それは、彼から説明してもらおう。入ってくれたまえ」
そう言うと、その部屋にあるたった一つのドアが静かに開いた。