表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/93

sesaon10-2 過去

「こちら第二戦闘部隊少佐ブラッド=クルー、荷物の搬送完了しましたのでこれよりライトパーソン基地へと帰還します」


『了解した』


 無線でやり取りするのは、ブラッドの乗る戦闘機だった。時は1947年、第二次世界大戦を終えたアメリカ軍ではあったが、小さな地域での戦闘は繰り返されていた。ブラッドは戦闘機にて、支援物質の搬送を終え、基地への帰還途中であった。


 外の天候は晴れてはいたが、基地のあるロズウェル地方は大雨と聞いていたのでそれに備えるための準備をしていた。ブラッドの乗る戦闘機に続いてもう一機、戦闘機が後ろにいる。ブラッドと共に支援物質を運んだ仲間だった。


 当時の戦闘機は、スピードを考慮したものが多いプロペラ機全盛の時代に比べてブラッド達の乗るヘルキャットは日本の零戦対抗機とされ、その機動力の高さが特に評価された。


 ブラッド達の乗る戦闘機は順調に夜の星が綺麗な空を飛んでいく。しばらくすると前方に、雨雲のようなものと、稲妻の閃光のようなものが見える。間違いなく積乱雲が発達した雨雲だろう。どうやら大嵐らしい。ブラッドはもう一人の仲間に注意を促すために無線で連絡する。


 しかし、なんの反応も返ってはこなかった。不思議に思ったブラッドは目で確認するために後ろを向く。後ろを向いた瞬間、ブラッドは思わず、誤って降下してしまった。それに驚いたブラッドは再び体勢を立て直すと再び後ろを向く。そこには、ブラッドが体勢を崩してしまった原因であり、仲間の反応がない原因であるはずものがいた。


 仲間のヘルキャットにピッタリと張り付くように飛ぶ一機の謎の物体。それは三角形に近い形をしており、その船体は銀色にコーティングされていた。その物体はプロペラも付いておらず、まったく音を立てることなく飛行しており、不思議なことにレーダーにすら映ってはいない。


 ブラッドは敵の戦闘機だと思い、その機動力を駆使してその船体の後ろに回り込もうとした。そして、相手の位置を目で確認するために再びその謎の物体を見る。しかし、そこにいたはずの物体の姿はなかった。いや、今度はブラッドの船体の上空にピッタリと着いて飛行していたのだ。


 ブラッドは再び、仲間に無線で連絡する。しかし、相変わらず反応はない。


 その時謎の物体から、一瞬光のようなものが出た。それは、ブラッドにとって気のせいかもしれないと思うようなくらい一瞬の光だった。しかし、次に起きた出来事にブラッドはそれが気のせいではないことを知ることになる。


 ――仲間の戦闘機が突然大爆発を起こしたのだ。


 ブラッドは驚いた。突然の謎の物体からの攻撃。


「こちら第二戦闘部隊少佐ブラッド=クルー、現在謎の物体と接触。仲間が攻撃を受け撃沈された。繰り替えす――」


 しかし、その無線にはなんの反応もない。


「くそ! どうなってる?」


 ブラッドは無線が通じないことに疑問を抱いていたが、それ以上に現在目の前にいる謎の物体の動きに気を配っていた。アメリカの戦闘機の最大の機動力を誇るとされるヘルキャット以上のいや、日本の零戦以上の機動力を持つ謎の物体との戦闘。ブラッドは内心怯えていた。


 しかし、軍人である精神力でなんとか逃げ切るためにブラッドは最大出力でエンジンを回す。それに呼応して戦闘機はスピードを上げる。しかし、謎の物体はそれでも後を追ってくる。それは着かず離れずの絶妙の位置だった。その間もブラッドは何度も無線連絡を繰り返す。


 ブラッドはあることに気が付いた。戦闘の基本。敵に後ろを取られるな。しかし、今は謎の物体にピッタリと後ろに着かれている。ブラッドはなすすべがないままでいたが、それでも多少戦闘機の乗り方については自信があった。


 ブラッドは、逃げ切ることはできないと判断しある準備をする。そして、戦闘機を瞬間的に上昇させる。そのまま反り返るように反転する。本来ならばこれで敵の後ろを取ることが出来るが、この相手にそれは通用しなかった。


 謎の物体はいつのまにか、またブラッドの戦闘機の背面にあたる部分にいる。しかし、ブラッドはこれを狙っていたのだ。敵が背面にいるつまり、この状態で急激にスピードを落とせば、敵のすぐ後ろに出ることが出来る。ブラッドは、急激にスピードを落とした。そして、一瞬謎の物体の背後を取る。その瞬間、あまりに近いためにブラッドの乗るプロペラと謎の物体が接触した。プロペラは弾き飛ばせれ戦闘機はそのまま謎の物体と接触した。その反動で、謎の物体は船体に傷をつけ煙を上げながら降下していく。その先は嵐の雲だった。


 ブラッドは、謎の物体が煙を上げながら雨雲の中に入っていくことを確認したが、ブラッドの戦闘機もプロペラという核を無くし、降下している。ブラッドは、こうなることを予想していたかのように座席の横にある緊急脱出ボタンを押す。ブラッドは座席ごと排出され、しばらくしてパラシュートを開いた。戦闘機はそのまま墜落していき、広い荒野の一角に墜落した。しかし、その遥か彼方で謎の物体も墜落したようだ。


 ブラッドは空中で風に揺られながらそれを確認した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ