season8-4 整理
「それじゃあ、まずは全ての始まり新井拓也ことたっくん、アダムのアブダクションからね」
仕切り始めたのは美奈だった。美奈はどうやらリーダーに向いているらしい。物事をまとめたり取り仕切ったりするのが比較的得意だからだ。あまり人の意見を聞かないところがたまに問題だが。
「たっくんは、高校生の頃にアブダクションされた。それがたっくんを動かしている原動力であり、私達が動いている原因でもあるんだけど、このことに関しては私よりもレイラのほうが詳しいわね」
「ええ、私はあの時彼らの飛行船に乗っていたから詳しいわ。正確にはアダムは過去に幾度となく誘拐されているの。でも彼らがその記憶を消していた。それは安全性を考えてのことなんだけど。アダムを誘拐していた理由は、彼の身体検査をするためよ。アダムとしての覚醒具合を見るためにね。そしてあの日私は彼らからコンタクトを受けた。内容は、”今日はアダムの覚醒の日だから一緒に来るといい”ということだった」
そのレイラの言葉に美奈が疑問を抱く。
「覚醒? たっくんにも聞いたけど確かたっくんは覚醒していないって……」
「ええ、あの日はアダムが覚醒するはずだった日なのよ。けど、なぜかアダムは覚醒していなかった。だから彼らは誘拐の記憶を残すことで少しでも覚醒が起きるきっかけを作ろうとしたのよ」
「そして、それから数年……レイラによってアダムのことを知り、アダムと接触するために大学生としてサークルを作り新井拓也、アダムと接触した。そして次の日レンが現れた」
「ああ、俺は事前に軍事基地から拓也の情報を引き出していたからな。あの大学にいることは分かっていた。そしてお前達と接触するために月のDVDを手土産としておいて置いたんだ」
「月の?」
レイラが美奈のほうを見て聞いた。
「ええ、レンが軍事基地から盗み出した月面着陸の時の映像よ。一般に公開されている映像とはまるで違う映像が出てきたのよ。そしてそこには三人の宇宙飛行士と人によく似た謎の生物が映し出されていた」
「そう……。よく盗み出したわね。それは真実の情報だと思うわよ。そのDVDに映っている人によく似た謎の生物こそ異性人そのものなんだから。私やアダムに接触してきたチルドレンは彼らと人間の手によって作り出されたのよ。彼らは二重の策を用意している。本来のチルドレンの目的は軍事利用が主だけど。彼らチルドレンを異性人としたてさらにその異性人達の存在を否定することで、国レベルの軍事機密を守る糧としたのよ。そうすれば仮にUFOを見たなんて目撃情報があっても否定できる。嘘がばれてもチルドレン達を異性人だとしておけば本物の異性人達が地球で活動するのに不利にはならない」
「そこまで考えているのね。政府は……」
美奈が考え込むような顔つきで言った。
「でもレンがDVDを盗み出したように人が作ったものである以上必ず隙が出来る。そこを上手につくことが出来れば真実にたどり着くことは出来るはずよ」
美奈が頷く。
「それでその数ヵ月後、美奈が誘拐されたふりをしたんだよな。それでお前を救出するためにICBMの発射コードをハッキングしたりして大変だった。それでその後ロサンゼルスに向かうために飛行機に乗ったんだけどその飛行機はハイジャックされたりして、ありえなかったよ。しかも墜落するし。まぁ、二体のUFOらしきものが飛んできて助かったんだけどな」
「その事件は新聞でもテレビでも見たわ。恐らくアダムが乗っていたからね。まだアダムには死んでもらっては困るから例え周りに目撃されてでも助ける必要があったんでしょう」
「俺が気になっていたのはそのことなんだ。レイラ、”アダム”は一体なんなんだ? 見た目はどう見ても普通の人間にしか見えない。拓也は人間じゃないのか? 覚醒ってなんなんだ?」
「そうね。そこから話す必要があるわよね。私もチルドレンから聞いたこと以外は知らないんだけど、私が知っているアダムについて話すわね」
レイラはそう言うと、一度深呼吸をし、静かに語り始めた。