season8-3 車内
美奈達は、レンタカーを借りてNASAに向かっていた。運転しているのはレンだ。
「美奈、レイラちょっといいか?」
レンの言葉に二人はレンの方を見た。レンは運転しているので前を向いたままだが。
「もうこの際だからはっきり言う。俺はUFOも異性人も信じている。でもそれは拓也に出会ってから起きたことや軍事基地、国防総省、NASAなどにハッキングして得た情報があるからだ」
「どうしたの? 何が言いたいの?」
隣に乗っていた美奈がレンに聞く。
「だが、俺はいままで直接この目で異性人をみたことはない。UFOらしきものはハイジャックされた時に見たが……人の言う証言というのは正直、”証拠”とはならない。仮に俺が、ほかの人にUFOを見ましたなんて言っても誰も信じないだろう。ましてや、アメリカは日本とは社会情勢が違う。そんなことを言ったところで笑いものにされたり偏見的な目で見られるだけだろう? そうだろ? レイナ……」
「そうね。だから私達アブダクティーも、それなりの覚悟で言っているのよ」
レイラは真剣な顔で答えた。しかしそこには少しの悲しみも混ざっているようだった。
「それだけの覚悟があっても、誰も信じてはくれない。それは、確たる”証拠”がないからだ。しかも必死に証拠を集めようとしても、政府の権力で消されてしまう。謎の監視や突然の襲撃、失踪。命を狙われているこの状況。
もうとても一般人レベルを超えている」
「レン……、それはもうこの件から降りたいと言っているの?」
「……」
美奈の問いかけにレンはなにも答えない。
「レン、確かにあなたの言うとおり政府はUFO関連の事件については証拠を消している。それはデイビットの話からも確実よ。デイビットは裏でそういう仕事をやっているようだから。でもね、レン。あなたと初めて出会った時、あなたが言ったことよ。”覚悟を決めるしかない。進むしかない”。さっきだってそう言ってNASAに向かうことを決めたんでしょう?」
「……、分かってる。俺が言いたいのはそういうことじゃない。今世の中は真実と嘘とが織り交ざっている。もうそれはどれが真実でどれが嘘かなんか分からない。俺がハッキングした軍事基地のデーターだって、極秘機密いわゆるトップシークレットだ。普通に考えて嘘の情報なわけがない。けど、奴らはもし万が一ハッキングされた時の対策も立てていた。それは偽のトップシークレット。パスワードを苦労して解いてたどり着いたのは偽の情報だった。よくあることだ。しかし俺達にはそれが真実か嘘かはわからない。ただ軍事基地にあるパスワードのかけられている情報。それだけで本物だと思ってしまうんだ」
「つまり、このUFOの事件も嘘ってこと?」
美奈が聞く。
「そうじゃない。言っただろ俺はUFOも異性人の存在も信じている。ただ、真実か嘘か。それを見極めるためには自身の目で物事を見ないと駄目だと言うことだ。だから、今この場で整理しよう。いままで起きた出来事の嘘と真実。それを考えよう。NASAまでまだ時間がかかる。考える時間はあるだろ? それが少しでもまとまれば状況が変わるかも知れない」
「いい考えだと思うわ」
後ろの座席にいたレイラが言った。美奈も頷く。
「じゃあ、一から整理しますか!」
全員が頷いた後、美奈の声が車全体に響いた。