season6-4 チルドレン
「久しぶり?」
レイラの予想もしない言葉に疑問を投げかけたのは拓也だった。初対面のレイラから出た言葉に拓也が戸惑うのも無理はない。
「ええ、アダムあなたと私は何度も会っているのよ。一番最後に会ったのはあなたが高校一年の時ね。覚えてない? 誘拐されたときのことを」
拓也はその言葉にハッとして昔誘拐されたときのことを思い出していた。
「思い出したみたいね。ほんとはあなたはそれ以前から何度も誘拐されているんだけど、記憶にあるのはその一回だけのはず。それは覚醒が近いからなんだけど」
「覚醒?」
拓也はレイラに質問をする。
「覚醒のことについては後々分かってくるわ。もうそれほど遠くないから。大事なのはあなたの認識力よ」
拓也はその言葉に疑問符を浮かべている。
「アダム、あなたを誘拐したのは異性人ではないわ」
「え!?」
その言葉に拓也だけでなく美奈も驚いているようだ。拓也はいままであの時誘拐したのは異性人だと思っていたのだから無理もない。
「彼らは”チルドレン”と呼ばれる生命体。この星、地球で生まれた”第三種”の知的生命体よ。作ったのは人間、愚かな人間の神の真似事により作り出されたの」
「チルドレン……」
「チルドレンはアメリカとロシアの共同研究機関がヒトゲノムを参考にして作り出したバイオ生命体なの。その目的は浮遊型飛行物体の飛行テスト用と生態の解析、戦争への投入などの軍事目的。あなた達がUFOと呼んでる飛行物体はどれも反重力原理を応用した物体なのよ。それは瞬間的に時速4000キロまで速度を上げることが出来るの。その時に人体にかかる重力は約40G――。彼らはあの小さな身体に人間では耐える事の出来ないその圧倒的なスピードに耐えるだけの肉体を持っているのよ」
「……異性人じゃない? この地球で生まれた生物……」
拓也は今までの認識と違う出来事に戸惑っていたが、なぜか不思議に納得していた。しかし美奈は、納得してないようだ。
「ちょっと待って、それじゃあレイラやたっくんが誘拐されたのはアメリカやロシアが関わっているってこと?」
「いいえ、アメリカもロシアもアダムや私の誘拐に関しては関わっていないわ。まぁ当然気が付いてはいるんだろうけど、何も妨害をしてこないのは妨害する必要がないのか、それとも……。とにかくアメリカやロシアは関係ない」
「でも、じゃあなんでたっくんの誘拐を?」
「彼らチルドレンは知能も感情も持つ生命体なの。人並みにね。当然反発意識は出てくるわ。つまり私達に接触して来ている彼らはチルドレンの中でもはみ出し者って言うことね」
「じゃあなんのために危険をおかしてまでそんなことを?」
それを聞いたのは拓也だった。
「それは、アダム……あなたよ。アメリカもロシアもはみ出し組みも目的はアダム一人。彼らはあなたの中にある一つの力に注目しているの。それはアダムが生まれる遥か昔から受け継がれてきて、育まれてきた人類の”究極の進化”の形……」
「究極の進化……」
拓也は真っ直ぐレイラの目を見ながら話を聞いている。
「いったい彼らは俺にどうしろと?」
「いまは、何もしなくていいわ。でも時が来たらあなたは動かざるを得ない。覚悟しておいてね、アダムあなたは生まれた時から、いえ……生まれる前からこうなる運命だった。そしてあなたにそれを伝えるのが私の運命なの」
「え?」
「私や、ほかのUFO接触者、いわゆるコンタクティーは全てあなたに伝えるべきことがあるから存在しているの、だから私はアダムのことを知っていたし、ほかのコンタクティー達もアダムのことは知っているわ。でもそれが私が逃げなければならない理由の一つでもある」
その言葉に美奈はハッとした。そうロサンゼルスで会う予定だったレイラはこのD−1に避難している。ロサンゼルスでなにがあったのか、美奈はそれが気になっていた。
「ロサンゼルスでなにがあったの?」
美奈の質問にレイラは美奈のほうを向いた。