season6-3 レイラ
「なるほど、尾行が不可能っていうのはこういうことか」
レンが周りの景色を見ながら言った。
そこは、ただの広い荒野が広がっていた。何キロ先までも見ることが出来る視界良好の状態は周りに誰もいないことを物語っている。尾行しようにもここまで見通しがよければ出来ない。
その広い荒野を黒いBMWが一台、かなりのスピードで走っていく。
さらにしばらく走ると前方に、岩山のようなものが見えてきた。多少の森林もあり、砂漠で言うところのオアシスのようなものが姿を現した。どうやら車はあそこを目指しているようだ。つまりD-1という場所はあの岩山の所ということになる。
車は、その場所へと行き着くと、停止した。
ここまでかなりの距離を走ってきたため、車から降りた拓也達は全身に酷い疲労感を感じた。五人もの人間が車の中に閉じ込められ長時間車に揺られてきたのだから当然と言えば当然なのだろうが。車というのは運転していなくても、乗っているだけで疲れるものだ。
「こっちだ」
デイビットが拓也達を呼び寄せた。デイビットが呼び寄せたその先には、一軒の白い家が建っていた。
「ここに、そのレイラって人がいるの?」
「ああ、そのはずだ」
拓也の質問に間髪いれずに答えたのはブラッドだった。
拓也達はブラッド達の後ろからついていきその家の前までやってきた。
だがそこまで来ると、ブラッドとデイビットは再び銃を取り出し、警戒を始めた。おそらく、ロサンゼルスでのことを経験として生かしたのだろう。美奈も今度は銃を構えている。そして、静かにインターホンを鳴らした。
すると、インターホンの音が家の中全体に響き渡る。当然外にいた美奈達の耳にもその音は響き渡った。
インターホンの音が消え、しばらくすると中から足音が聞こえてきた。
そして静かに、ドアノブが動く。それとほぼ同時にドア本体が外へと開き始める。
「あら、お持ちしてましたよ」
出てきたのは、中年の女性だった。
「レイラ、よかった。無事だったのね」
どうやら、この女性がレイラという名前の女性らしい。レイラが無事なことを確認すると、美奈達はレイラへ連れられてレイラの家の中へと入って行く。そして、客室のような広いリビングに通されて、座るようにレイラに促された。そして、拓也達は椅子へと座った。ただ一人、デイビットだけは壁へともたれかかっているが。
レイラはキッチンから飲み物を持ってくると全員にそれを配った。配り終わると自らも後ろの景色がよく見える大きな窓ガラスの近くの椅子に座り、持ってきた飲み物を一口飲んで口を開いた。
「ようこそ、みなさん」
「レイラ、一体ロサンゼルスでなにがあったの? D-1なんてただ事じゃないでしょ?」
美奈がレイラに心配そうに聞く。
「ええ、ちゃんと話すわ。でもその前に……」
そう言うと、レイラは拓也のほうを見た。拓也もレイラのほうを見ていたので目が合った。そしてレイラはそのまま拓也から目を離さず
「お久しぶりね。アダム」
レイラは、自らの口の端を上げ笑顔で拓也にそう言った。