season6-2 D-1
拓也達はブラッドの運転する黒のBMWに乗っている。前の座席には運転しているブラッドと助手席に乗っているデイビット。後ろの座席には真ん中に美奈が、両端に拓也とレンが乗っている。五人だと結構きつめだ。
ブラッドは車で高速へと入り、速度を上げ始めた。
「ねぇ、美奈さん? 一体なにを見つけたの?」
拓也の疑問を聞いた美奈はポケットから先ほど見つけた紙を取り出し、拓也に見せた。そこには『D−1』と書かれていた。
「え? どういう……」
「それは危険レベルを表しているの。デフコンみたいなものね」
「デフコン?」
拓也はまた聞きなれない単語に疑問を浮かべていた。美奈は拓也のほうを見て大きくため息をつくと軽く舌打ちをした。
「ほんとになにも知らないんだから。マジ馬鹿! デフコンっていうのはディフェンスコンディションの略で1〜5までの状態があって、1が一番危険だということ。そのD-1もそれと同じで一番危険な状態となっているというメッセージよ。あたし達はレイラとあらかじめこういう状態になった時の対処法を考えてあったの。もし家をすぐにでも出なければならないほどの危険な状態になった時は、D-1地点に行くようにね」
その言葉に拓也はまた疑問符を浮かべた。
「D-1に行くように?」
「そうよ。D-1は危険レベルと共に場所を表しているの。だからいまあたし達はD-1に向かってるってこと」
美奈は説明し終わると前を向いた。
「だが、美奈。それなら大丈夫なのか? 尾行とか」
それをレンから聞いた美奈は今度はレンのほうを向いて答える。
「さぁ、いまは尾行されているかも知れないけど、D-1まで尾行するのは不可能なはずよ」
「どういうことだ?」
レンは美奈に疑問符をぶつける。
「着くまでに分かるわよ」
そう言うと再び美奈は前を向いた。
「どう? デイビット?」
助手席に座っているデイビットはノートパソコンを広げて、なにやら探し物をしているようだった。手には先ほどの盗聴器を持っていた。
「いや、分からないな。ただこの盗聴器は市場で出回ったやつじゃないことは確かだ」
「そう」
美奈は残念そうな顔をしている。デイビットは盗聴器からなにか手がかりがないか調べていたのだ。そう盗聴器を仕掛けた人物を探すための手がかりを。
車は、しばらく行ったところで高速を降りた。
ずいぶん遠くまで来た様で、回りにはさきほどまであったビル郡はなくなり、民家がポツポツと立っている程度だった。さらに数時間走るとその民家もなくなり、広い荒野へとでた。そこには永遠に続くのではないかと思うほどに長い直線の道路があるだけで、車が走ると砂埃を上げているのが分かる。
ブラッドが運転するそのBMWは土煙を上げながらその荒野を駆け抜けていく。
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