season4-3 HP-608便
機内は静まり返っていた。犯人達にも現在は動きはない。人質の女性はいまも頭に拳銃を突きつけられトイレの近くで立っている。
コックピットで行われているやりとりを知らずに、レンは頭の中でいまの状況を整理し、糸口を掴もうと考えていた。
このHP−608便の機内は、横に2つずつ席が並び、間に通路を挟んで計6つの席が並んでいる。縦にはA〜Zと残り少しが全部で25列並んでいて、乗客は全部で150名乗ることができる。レンはハッキングした時に、この便は満席だということを知っていた。さらに4名のキャビンアテンダントに機長と副機長・・・計156名がこの飛行機に乗っている。
座席Lの後ろの中央にトイレがあり座席L−2の横に人質と犯人が立っている。
犯人達は全部で4人。1人はコックピットに、1人は人質をとりトイレの前に、1人はトイレより後ろ側に、1人は機内を行ったり来たりしている。
犯人達の動きから、これが計画的に進められていることだと、レンは気が付いていた。
そして、この状況を整理し隙を伺っていた。
犯人のうち3人はフルオートの銃を、人質をとっている男は拳銃を持っていた。拳銃の種類はガバメント、38口径の銃だ。装填数は9発。
レンは自分の可能な限りの知識を引き出していた。
「もういい加減にしてくれ!!」
いきなりなんの前触れもなく、乗客の1人が大声を張り上げながら立ち上がった。
犯人達もほかの乗客もすべての視線がそっちにいく。
その人は男性で、茶髪のアメリカ人の中年男性だ。グレーのスーツを着ている。
「わたしは、ロサンゼルスで大事な会議があるんだ!」
男は大声で女性の頭に拳銃を突きつけている犯人に向かって言った。
「お前達の悪ふざけに付き合ってる暇はない!!機長出て来い!!すぐに空港に着陸してくれ!!」
男は大声で叫びながら、席を離れコックピットに向かおうとした。
その時、前と後ろを行き来していた犯人の1人のフルオートの銃が激しい銃声と共に火を噴いた。
席を立っていた中年の男は、背中に多数の銃弾を浴び、背中から大量の血を出しながらそのまま床に倒れ動かなくなった。
床は男の血を吸い、赤く染まっていった。
それとほぼ時を同じくして、他の乗客たちの叫び声が機内中に響いた。
それを聞いた犯人の1人が叫びながら言う。
「静かにしやがれ!!ブチ殺されたいか!!」
その声をきっかけに叫んでいた他の乗客達は静かになり再び機内に静寂が戻った。
HPは実際に存在する航空会社です。実際に昔HP-606便が事故に遭っているのでこの話で登場するHP-608便も恐らく存在していると思いますがこの話と航空会社とはなんの関係もありません。
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