season3-4 核
拓也は耳に当てていた携帯電話を胸の位置まで下ろすとレンに向かって今の電話の内容を言い始めた。
「レン、国防総省のパソコンに進入して、ICBMの発射コードを手に入れろだってさ。コードリストはnw00・・・・74?」
「nw0082だ」
拓也の間違いを即座にレンは訂正した。
「え?聞いてたの?」
「いや、録音機能付きの逆探知機が役にたった。やつらの言ったとおり逆探知は出来なかったが・・・」
レンは少し悔しそうな顔を見せた。
「そんなことより問題はやつらの言ってた指令・・・こいつは厄介だぞ」
「え?」
拓也はレンのいつもの冷静な顔ではない真剣で引き締まった表情とその言葉を聞いて疑問符を浮かべた。
「いいかよく聞け、やつらの言っていたICBMとはInter Continental Ballistic Missileつまり大陸間弾道ミサイルのことだ。そしてDoDにあるコードリストnwはnuclear warheadつまり核弾頭のこと・・・」
「えっ!」
それを聞いた拓也は驚きの表情を浮かべた
「その発射コードを俺に盗めと言ってきたってことはだ。つまりやつらは俺に核ミサイルを盗めといっているんだ」
「・・・な、それ・・・まじ?」
拓也は驚きのあまり声にならないでいた。額には汗がにじんでいる。
「こんな状況で嘘なんか言えるわけないだろ?」
レンも拓也も額からは汗がにじみ顔が強張っていた。そして2人の間にしばらく緊張と沈黙が続いた。
しばらくするとその沈黙を破るようにレンが切り出した
「さて・・・どうする?」
「え?」
その言葉に拓也もすぐに反応する。
「この情報をDoDから盗み、万が一バレたら、俺達は間違いなくテロリスト扱いで死刑は免れない。やつらにしちゃあ俺達が成功すれば核が手に入り、失敗すれば俺達に責任を擦り付けることが出来る。いい手だ、考えてやがる。だがやらなければ美奈が死ぬ。だからといって奴らに核が渡れば世界は終わるだろう」
「・・・そんなの答えは決まってるよ」
拓也は即答し、続けた
「美奈さんを助け出そう」
「・・・クククッ!!」
レンは突然なんの前触れもなく笑いだした。それをみた拓也は
「な、なにがおかしいんだよレン!」
「いや・・・悪い。アダムお前はすごいやつだよ。核が悪人の手に渡るかもしれない、自分の命が危険にさらされるかもしれない状況下ですぐに判断が出来る」
それを聞いた拓也は、すこし照れくさそうにしている
「アダムお前の言うとおりだ。俺達も美奈も世界も助かる道は、やつらの指令を絶対に失敗しないようにして成功させることだけだ」
「でも俺は、やつらに核が渡った後のことなんか考えてなかった」
拓也は少し悔しそうにしている
「大丈夫だ、俺にまかせな。やつらに核は渡さない。とにかく今は美奈を助けることだけを考えるんだ」
「レン・・・うん、やろう!美奈さんを助けるんだ!」
拓也の意気込みにレンは静かに笑顔でうなづいた。
部屋では金魚が一匹水槽の中を元気よく泳いでいた。