season3-1 誘拐
朝日が差し込む空間、そこには朝の静けさが漂っていた。
そこには金魚が水槽の中を泳いでいた。
静けさの中、単発的な音が部屋に響いていた。
そこには、パソコンの画面に視線を集中するレンの姿があった。
彼は静かにパソコンのキーボードに触れている。
指はまるでピアノの伴奏でもしているかのように軽やかにリズムよく動いていた。
「おはよう」
突然部屋に声が響き渡った。それは拓也だった。
「ああ、おはよう」
「はやいね、レン」
「ああ、まぁな・・・。ここなら静かに集中できるからな」
レンがサークルに入って早二ヶ月が過ぎようとしていた。
彼らは、無事サークル消滅の危機から抜けだし、宇宙の謎について調べていた。
「なにを調べてたの?」
「アメリカの情報さ、ここ二ヶ月新たな情報がないからな、久しぶりにここDoDに入り込んだ」
「DoD?」
「アメリカの国防総省さ、ここからは国の安全に関する機密文章がたまに出てくる」
「偽の機密文章だけどな」
「え?偽?」
拓也は首をかしげる
「ハッカー対策の偽情報さ。ハッカーがハッキングしたときに本物だと思わせるために偽のトップシークレットを作っていやがるんだ。本物は外部から干渉されないパソコンにデーターが暗号化されて保存されている。普通の方法じゃあインターネットを使ってのハッキングはできない」
「普通の方法じゃ無理ってことはできる方法もあるんだね?」
「ああ、あるさ。外部から干渉されないにしても今の世の中電波が飛び回ってるからな。たとえば携帯電話の電波。その電波にデーターをくっ付けてハッキングする方法がある。結構複雑な作業だが、割と面白いぞ。うまくやれば他人のメールや電話も傍受できる。教えてやろうか?」
拓也はその言葉に一瞬迷ったが首を横に振って断った。
「まぁ、いいさ。気が向いたらいつでも教えてやるから言ってこいよ。それよりあのクレイジー女はどうした?」
「ああ、美奈さんなら今朝携帯に今日は休むって留守電が入ってた」
「休み?珍しいな・・・」
レンはサングラス越しに真剣な顔つきを見せた。
「以前話したと思うが、俺達はいま命を狙われてもおかしくない状況だ。現にお前達にはじめて接触した次の日には、俺の情報までもが例の軍のデーターベースに載っていた。この中で一番狙われやすいのは女であり、このサークルのリーダーでもあるクレイジー女だ」
「まさか美奈さんに限って・・・」
拓也の顔も真剣になった。
「アダム、一応クレイジー女の携帯にかけてみろ」
「うん、分かった」
拓也は美奈の携帯に電話をかけた。
しばらくすると電話に誰かが出た。それに反応し拓也はとっさに美奈の名前を呼んだ
「美奈さん!?」
『・・・・・、斉藤美奈は誘拐した。返してほしくばこちらの指示に従ってもらおう』
その言葉に拓也は愕然とした。半分冗談のような空気が漂いながらも妙な現実味が拓也を支配した。
目の前で起きた突然の出来事。美奈の誘拐。拓也は言葉を失った。
電話の内容を知らないレンが拓也の表情を見て、ただ事ではないと察して聞いた
「どうした?」
その言葉に拓也はレンのほうを見てうなずく
「まさか…ほんとに誘拐か?」
レンが言った。
『そこにハッカーがいるな?そいつに代われ』
拓也は携帯を耳から離し、レンを見て言った。
「レンに変われって。美奈を返してほしかったら指示にしたがえって」
それを聞いたレンは静かに拓也から携帯を受け取った。
いよいよseason3です。本格始動開始です