season2-6 進むしかない
アメリカの大統領邸……ホワイトハウス。そこの地下にあるという極秘の軍事基地。その事実を知る謎のハッカー。様々な謎が飛び交うこの空間には三人の人間が立っていた。
「ホワイトハウス? そんなとこに軍事基地が?」
口を開いたのは美奈だった。
「知らなくて当然さ、俺も知ったのは偶然だったからな」
ハッカーの男が言う。
「偶然?」
拓也の口も動く。ハッカーの男は頭にあの日のことを思い出しながら話しはじめた。
「そうだ……、あの日俺はいつものように、企業のデーターをハッキングしていたんだ。だが俺の目的は企業のデーターを盗むことじゃない。いかに正確にそして早くプロテクトされたデーターを盗み出せるか。それが俺の楽しみ方だった」
拓也も美奈も黙ってハッカーの言葉に耳を傾けている。
「ハッキングするってのは意外と簡単でな。馬鹿なやつらは複雑なプログラムにすればするほど進入が難しくなると考えているようだが、複雑にすればするほどプログラムにスキができるものなんだ。俺はそこをつく。あとは逆探知が出来ないくらい簡単で小さなすぐ消去できて証拠も残らないPerlスクリプトを組んで進入するだけ。俺が偶然見つけたそれも簡単に進入できた。だけど問題はデーターの中身だった。そいつはいままで見たどんなデーターよりもデンジャラスなレポートだった」
「でも、なんであのことが軍のデーターに?」
拓也が男の話の間に割って入った。
「俺も知らないさ。ただ俺が分かるのは命が危険にさらされるほどのとんでもないレポートをつかんでしまったってこと。そしてこのレポートはあんたらに繋がりがあるってことだけさ」
「命の危険?」
美奈が聞いた。
「クレイジー女にしては、めずらしい質問だな。気が付いてなかったのかい?俺達はずっと監視されているんだ。もちろんいまこうしてここにいることも、もしかしたらこの会話も全部聞かれてるかもしれない」
その言葉に反応して美奈も拓也も周りを見る。
「探したって無駄さ。あるとしたら盗聴器や小型カメラ。もしくは何百メートルも先からライフルのスコープで監視しているかだ。一素人じゃとても見つけられない」
「……どうすればいい?」
拓也の声には緊張が走っている。
「答えは簡単……、突き進むしかない。もう後戻りは出来ない。アンタが生まれた瞬間からもう前に進むしかなくなってるんだ。出来ることは覚悟を決めることだけ。あんた達が追っているのはもう……神の領域だ。だから、俺もこのサークルに入れてもらうぜ。だが俺の目的はさっきも言ったように中身じゃなくいかに強靭なセキュリティーを破れるかだ。それを忘れないようにな」
それを聞いていた美奈が不敵に笑う。
「ふふん、面白いじゃない。アメリカでもなんでも来いってのよ! 私が相手になってやるわ」
「うん、やるしかない。真実を見つけるんだ」
拓也も負けずと気合を入れる。
「そうでなくっちゃな。おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名前はホープ=レクシン=田中だ。レンと呼んでくれ」
レンは笑顔で言った。
「わかったわ、田中君」
「え……いやだからレンで」
「だから分かったってば、田中君」
「……さすがクレイジー女だぜ」
こうして、このサークルに仲間がまた一人加わった。だが、拓也も含めこの三人がこれから大きな陰謀に巻き込まれていくことをまだ誰も知らなかった。
season2はこれにて終了です。いよいよseason3からは急展開です。
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