season2-5 軍事基地
部屋にはまだ朝の光りが差し込み、窓辺の金魚はいつもと同じように水槽の中を泳いでいた。水槽の外で行われているやり取りなど知らずに。
「ハッカー?」
拓也が口を開いた。
「そうだ、インターネットを経由してほかのパソコンにアクセスする。つまりハッキングするのさ」
サングラスをかけた茶髪と金髪が入り混じったような髪をした顔立ちの整った男は拓也の問いに答える。続いて美奈が問いかける。
「つまり他の人のパソコンから私達のことを調べ上げたの?」
「ああ、そうだ」
男は笑みを浮かべ答える。
「俺がアダムってことも?」
拓也は真剣な顔付きで聞いた。
「そうだ。あんた達のことも、アンタがアダムだということも全部俺がハッキングしたパソコンから出てきた情報だ」
「一体どこにアクセスしてそんな情報が?」
美奈はいつになく真剣な顔で聞いた。いまは男以外に笑みを浮かべているものはいない。拓也も美奈も真剣な顔付きだ。
「ちょっと待って。アダムのことを他の人間がしってるはずがない。俺が話したのは美奈さんだけだし」
拓也はいつもより大きな声で聞く。
「UFOだろ?」
その言葉に拓也の顔は驚きの表情で満たされた。
「だが……それは違うぜ。あんたが見たあれはUFOなんかじゃない」
「俺がアクセスしたのはUSAのある軍事施設だ」
「軍事施設?」
「そう、USAのある場所の地下にある極秘の軍事基地さ。そこでアンタ達の情報とさっきアンタ達も見た映像を見つけたんだ」
「アメリカの軍の基地から発信された情報をハッキングしたの?」
美奈が聞いた。
「そうだ……。いいかよく聞け。おまえ達の情報もこの月の映像も、軍のパソコンから出てきた。俺にかかればハッキングは簡単だったが……」
美奈と拓也は疑問符を浮かべる。
「この情報のセキュリティーはトリプルAだった。つまり最重要機密。いわゆるトップシークレットだってことだ。大国アメリカがお前達のことを国のトップシークレットに指定しているんだ。これがどういうことか分かるか? お前達が出会ったのは昨日、しかし今日の朝には軍のパソコンには美奈のことも載っていた。経歴まですべて調べ上げられてだ。アンタ達は監視されているんだよ。いや正確に言えばアダム……アンタが監視されているんだ。アンタが生まれる前からな」
拓也は目を大きく見開いて驚きの表情を浮かべている。
「ちょっと待って。さっきアンタある場所の地下の軍事基地って言ったわね? ある場所ってどこ?」
男は美奈の目を見つめ言う。
「いいところに気が付いたな。クレイジー女」
「俺がアクセスした場所それは、アメリカの首都ワシントンにある……」
拓也と美奈が息を呑む。
「大統領邸ことホワイトハウスの地下に存在する極秘の軍事基地さ」