一章 琴葉 6 告白
「♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
・・・・・・携帯の鳴る音で目が覚めた。
メールが来たみたいだ。
いつの間にか意識を失っていたようだ。
なんだかとても気分が悪い。体が重い。
「・・・・今何時だろう。」
真っ暗な部屋で携帯を開くと時刻は8時ちょうどだった。
今日はずいぶん早く終わったみたいだな。なんて考えながらメールを開くとそこに届いていたのは恭祐からのメールだった。
今日は本当にありがとう
霧崎と付き合えることになって嬉しいよ!
今日が記念日だな、忘れないようにしとく!
何のことないただのメール。そんな風に思えなかった。
私は恭祐を裏切った。
恭祐と付き合うことになった今日この日のうちに。
実の兄と、あんなことをしていたのだ。
もちろん望んでしていたわけではない。
だがそんなことはそれ程問題ではなかったのだ。
どちらにしても結局したのだから。
気が付けば私は恭祐に電話を掛けていた。
何のためにかけているのかは自分でも解らなかった。
ただ、そうすれば今、私の眼から溢れ出ている涙を止めることができるような気がしたから。
「・・・もしもし。霧崎?」
「・・・・・・恭祐。」
「どうした?泣いてるの?」
「私、恭祐のこと、裏切った。」
「裏切った?裏切ったって、何が?」
「・・・・・私、・・・・わた・・・し・・・・・。」
言えなかった。兄に犯されていたなんて。
何年も、何年も好き勝手弄ばれていただなんて。
私は黙り込んでしまった。
「何があったんだ?―――全部話して。」
私は全て話さなければならない衝動に駆られた。
自分が嫌われたくない想い。自らの性体験の暴露に対する羞恥心。
それらすべての感情を抑えても余りあるほどの絶対的な衝動に。
「・・・・・・あのね、恭祐。」
気が付けば私は全てを打ち明けていた。