四章 who is their origin? 1 Novel medical treatment
おおよそ心の平静を取り戻してきた私は、自分の身体が随分と壊れていることを文字通り痛感していた。
思わず痛みが表情に出てしまった時、綾子さんに時音の事は和輝に任せてもう休むように言われたが、私の心情はそれを許してはくれなかった。
「・・・時音を撃ったのは私だから。・・・時音が助かるまでここにいる。」
そう言いながら私はまともに動く右脚を軸に立ち上がり、時音の事が見える位置の壁に寄り掛かった。
そこから見える時音の顔にはまるで生気がなくその目は虚ろだった。
綾子さんは私の表情を見てだろうか、申し訳なさそうに言う。
「・・・見ない方がいいよ。私の魔法はもともと人を治すために使うものじゃないから、きっとつらい思いすると思う。」
綾子さんの表情から今から恐ろしいことが起きるのはよくわかったが、私が首を横に振ると、「・・・そう。」とだけ言って、俯いた。
そこに和輝が戻ってきた。
和輝が手に持っているのは裁縫用と思われる大きな鋏と注射器。和輝は死んだような目で私を見て、「・・・ここにいるのはいいが俺が何しても黙ってみてろよ。」と言い、私が頷いたのを確認すると、和輝は死んだような目を時音に向けた。
死んだような目は真剣なまなざしに変わった。
「この子の血液型はわかるか?」
和輝は私に尋ねた。
「B型、私と同じ。」
和輝は頷き、小さく「良かった、お前最後までここにいろ」と言って裁ち鋏を握りなおした。
和輝は時音の耳元に顔を近づけ、鋏を持っていない方の手で首に触れ、脈をとりながら囁く。
「聞こえるか?聞こえたらまばたきしろ。」
和輝がそう言うと、時音はゆっくりとだが、まばたきをした。
「意識ありか、運がないな嬢ちゃん、麻酔が効くまで待ってる余裕がない、無茶苦茶するけど嬢ちゃんを助けるためだ、我慢してくれよ。」
時音はもう一度ゆっくりまばたきをした。
和輝はそれを見て頷き、脈をとっていた方の手で器用に注射を打ち、裁ち鋏を時音の傷口に当てた。
背筋は震えたが、私はそれを押し殺しその光景に目を向け続けた。
「・・・いくぞ。」
和輝は時音の傷口を切り裂き、時音の腹に手を入れた。
時音の顔は歪み、声にならない何かを口から吐き出していた。
私は目を逸らさなかった。・・・一瞬も。