三章 親友と。 7 再会
久しぶりな更新。
頑張りたいと思います。
「・・・それにしても、魔法ってすごいのね。」
時音は慌ただしく署内を歩きまわる警察官とすれ違いながら、感心したように言う。
「それ程のことじゃないさ、単にこの署内にいる僕と君以外の人間にはいつも通りの一日の幻覚を見てもらっているだけだよ。」
僕はこのやり取りで嘘を吐いた。
本当は僕の魔法に感心する時音自身が幻覚を見ているだけなのだから。
この署内に警察官なんて一人もいない。
もっとも、警察官だった何かはこの血塗れの署内に沢山転がっているのかもしれないが。
何も知らずに靴底から血を滴らせながら歩く時音の横でどうしようもない事を考えていると、彼女は小さく呟いた。
「・・・琴葉が今何をしているのかってわかるの?」
俯きがちにそう尋ねる時音の表情はとても複雑なものだった。
「・・・それは僕にもわからない。ただ、僕にわかるのは、彼女は生きている、ってことだけだよ。・・・歯痒いかもしれないけど、今は我慢してくれるかい?」
出来るだけ柔らかい表情で時音に伝えた。
本来なら、時音に伝えたとおり、僕は琴葉が今何をしているのかなんてわからない。
ただ、今この時に限ってはそうではない。
・・・・・今、まさに、この廊下を歩いていけば、その霧崎琴葉とすれ違うのだから。
いつか直接時音を助けに来るだろうとは思っていたが、まさかこれほど素晴らしいタイミングで来てくれるとは思わなかった。
いま、この警察署は僕の幻覚の圏内だ。
霧崎琴葉は、もう、僕達の姿を認識することは出来ない素敵じゃないか。
互いに互いのことを想い合う親友同士が、気付くことも、意識することすらもできずに、すれ違っていくなんて。
一歩、また一歩と、距離が近づいていく。
同時に、彼女もこちらへと歩いてくる。
そして、すれ違う。
琴葉は、すれ違う瞬間に少しだけ歩みを止めたように見えた。
僕はこみ上げる笑いをこらえるのに必死だった。
笑いを抑えている僕に、時音が尋ねる。
「・・・また琴葉と逢えますよね。」
時音のその言葉は僕を笑わせようとしているように思えて仕方が無かった。
「もちろん、心配ないよ。・・・・きっとすぐまた逢えるさ。」
僕も悪ノリで答えた。笑顔で、優しく。
すると時音は小さく頷いた。
「・・・そうですね、信じましょう。・・・・私はこれからどうすればいいの?」
時音は真剣な顔で尋ねる。
僕は、少し考えてその問いに答える。
「・・・うーん、そうだなぁ、まずは魔法の修行から始めようか。」