三章 親友と。 4 新番組殺人魔法少女キリサキコトハ
和輝はまるで、呼吸でもするように煙を吸い込み、吐き出す。
「・・・どうして。」
ふと何かを思ったように和輝が言う。
「・・・どうしてそこまでこだわる?・・・その時音って子がお前にとって大切な親友なのはよくわかった。でも、お前、少しばかり、狂信的すぎる気がするんだが。」
煙草を猛烈な勢いで吸い終わり、灰皿に押しつけながら、私の顔も見ずに言う。
私が狂信的すぎるか、実際、確かにそうかもしれない。
時音は、本心では私の事なんて何とも思っていないのかもしれない。
「・・・違う、別に、狂信的なわけじゃない。」
私の口から出た言葉は、内心とは真逆。
自分の意見を統一することができなくなっている。
「・・・別に、お前がどう思うか、そこら辺はどっちでもいい。・・・そう言うことも込みで考えた上で、時音って子を助けたいと思うのか、思わないのか。それだけ聞きたい。」
和輝は私の眼を真っ直ぐと見つめた。
試されているのだろう。ざわついていた思考が。
一瞬にして止んだ。
「・・・時音が私の事をどう思っていても関係ない。・・・私は時音を助けたい。」
和輝はほっとしたような顔で、頷いた。
「・・・・そうか、・・・・じゃあ、仕方ないな、行くか、正面突破。」
和輝は自信満々といった様な表情で言った。
無謀な、作戦として成立しない作戦を、本気で実行する気のようだ。
「・・・仕方ない、か。・・・・まあ、他に方法も無いし。・・どうせ一回死んでるんだ、捨て身でもいいか。」
迷いは消えた。
時音を助けるんだ。
そのためのリスクなら、背負うだけの覚悟ができた。
「・・・そうか、腹括ったか。・・・俺も腹を括ろう。」
和輝は妙にやる気のある表情で言う。
だが、私は、そのやる気を妨害する。
「あんたは来るな。私が一人でやるから。」
和輝は「はぁ?」と間抜けな声を出した。
「一人でって、相手は警察だぞ?統率のとれた組織だぞ?一人なんて無謀にも程があるだろ?」
和輝は、私に、もっともな疑問をぶつける。
「相手が警察だからこそ来るなって言ってるの。わざわざ犯罪者になりに行きたいわけ?大体、一人でも二人でも無謀でしょ。」
私は和輝の疑問に一つずつ丁寧に答えた。
私の表情から、ついて来させる気が無い事を読み取ったのか、和輝は呆れたようなため息を吐いた。
「・・・・わかったよ、好きにしろ。国家権力VS殺人魔法少女を楽しんでみてればいいんだろ。」
完全に呆れ切ったような表情で和輝が私に皮肉っぽく言う。
「・・・わかってもらえればそれで良い。・・・・でも、その呼び方はやめて。」
・・・・誰が殺人魔法少女だ。