三章 親友と。 1 ニュース
はい、猫川です。
三章、始まります。
これからも宜しくお願いします。
「もう、二週間か。」
依然テレビでは飽きもせず、あの事件を報道している。
進展する様子を見せない捜査の状況に、犯人の一人である私は拍子抜けした。
それと同時に、もう一人の犯人の事を考えて、安堵する。
「・・・お前、よく飽きないな。」
ほとんど一日中テレビを見ているだけの私に、皮肉っぽく和輝が言う。
皮肉を言われても、私は外に出してもらえないのだからどうしようもない。
殺す対象に定まった神崎鏡也も、居所がわからないとは、笑い話にもならない。
この家の中で、私が今出来る事は、あの事件の報道を漏らさずに見る事くらいだった。
「・・・・あんたこそ、暇だな。」
よく考えると、和輝は仕事とかしていないのだろうか。
綾子は、ほとんど毎日大体同じ時間に出かけていくが、和輝は私と同じだけテレビを見ている。
いくら私の頭が悪くても、死んだ事にされている私と同じ生活をしていて、普通、とはならない。
「不況で仕事がねえんだよ。・・・水商売は綾子に禁止されたしな、くくく。」
和輝は、そんな事をつまらなさそうに言いながら、テレビのチャンネルを変え、眠そうに欠伸をする。
確かに、こいつなら綾子の体でも勝手に水商売とかしそうだな、と妙に納得してしまった。
和輝の方を見ていた視線をテレビに戻すと、テレビの画面で緊急事態が発生していた。
「ニュース速報、高校生連続殺人事件、第一発見者の少女、容疑者として逮捕。」
そんなテロップが、和輝が時々見ているドロドロとした昼ドラを映すテレビの画面上に踊る。
・・・・時音。
「和輝!チャンネル戻せ!」
私は思わず和輝に向かって叫ぶ。
和輝は私の勢いに驚いたのか、テレビのコントローラーを私の方に放り出した。
私はそれを受け止め、慌ててチャンネルを変える。
ニュースキャスターは新しく入ってきたであろう原稿を読み上げていた。
「・・・・繰り返します、事件発生当時、現場にいた、第一発見者の少女が、容疑者として逮捕されました。容疑者の少女は、遺体で発見された二十七人の同級生で、事件への関与を否定していますが、警察では、事件に何らかの形で関与している可能性が高いものとして取り調べる模様です。」
無機質なその声は、スムーズに私の頭の中に入ってきた。
このニュースで一番大切なのは、この事件の犯人として時音が逮捕されたってことだ。
「・・・・時音。」
私は言葉を失った。
時音が、捕まった。
その事実だけ理解して、思考が暴走し始めてしまった。
・・・時音はどうして、捕まったのか。確かに私も時音も人を殺すのなんてあの時が初めてだし、計画性があったわけじゃないのだから、探せば証拠なんていくらでも出てくるだろうが、その証拠だってきっと、賢い時音よりも私の方がたくさん残しているだろうし、当の私は死んだ事になっているのだから、簡単に考えれば、犯人は時音ということに・・・、いや、それは違うのだろう、最初に私を連続殺人の犯人と断定した形で報道されていたのだから、普通に考えて、時音が殺したと考えられる相手は私だけのはずだから、この事件の容疑者として、時音が逮捕されるのはおかしい事になるだろう。それとも何か?あの日記を書いて時音が私に罪を押しつけようとしたとでも言うのだろうか?それだけは間違いだと、断言できる、日記を残して罪を押しつけたかったのなら、時音は私の家を燃やす必要はないのだから・・・・・。
「・・・・・・おい、琴葉!聞いてるか!」
和輝が大声で私を呼ぶ声に気付く。
どうやら集中しすぎて周りの状況がわからなくなっていたようだ。
「・・・すごい集中力だな。・・・そんなことより、一つ気になってる事があるんだが、聞いても良いか?」
和輝は何やらとんでもない疑問を持っているような顔をしていた。
時音の事で頭がいっぱいなのに、何だというのだろうか。
和輝があまりに真剣な表情だったから思わず頷いてしまった。
私が頷いたのを確認して、和輝は私に尋ねる。
「・・・時音って子がお前を殺したんだろ?・・・なのに、なんでお前がその子の事を心配するんだ?」
和輝は不思議そうだったが、自分では予想していなかった質問だったから驚いた。
・・・そんなのは簡単な話だ。
「・・・時音は、・・・大切な親友だから。」