二章 嫌いな奴は殺すんだ。 11 嫌味
「・・・・よう、やっとお目覚めか?」
目が覚めた私に和輝が声をかける。
どうやら私達はお互いに裸で抱き合ったまま眠っていたらしい。
綾子はまだ眠っていた。
和輝は入ってきた部屋のドアを閉めながら、いつものように笑う。
「ククク、隠さないのか?俺、見た目はこんなんだけど男だぜ?」
和輝は私が裸を隠さないのが不思議だったのだろう。
「・・・いいよ、今更。それにどうせ私と綾子さんがしてるの見てたんでしょ?」
私は不機嫌だった。
もう少しだけ余韻に浸っていたかった。
それに、和輝が私と綾子の行為を見ていたであろう事が気に食わなかった。
「クク、見てねえよ。まあ、あれだけ喘いでたら筒抜けだけどな、ククク。」
和輝の笑い方はどことなく不快で、私の事を嘲るようだった。
「・・・・そんな事、今はどうでもいいんだ。・・魔法を教えるのはお前なんだろ?」
和輝を睨みつけながら言った。
理由のない怒りではなかった。
綾子と一緒にいたかった。
もう少しだけ。
そんなわかりやすい理由が、私にはあったのだ。
とにかく、私はそんな明確な理由のある苛立ちを治めるため、話題を変えた。
「御名答。あいかわらず鋭い女だな。」
話題の変更に成功し、少しだけ安心したが、私は鋭い女という評価をうけた。
単に苦し紛れで言っただけなのに。
和輝は少し驚いた顔をしたが、またすぐにニヤニヤした顔に戻って、壁に寄りかかった。
「まずは簡単な説明から。魔法は大きく分けて2種類あって、魔法的な魔法と、物理的な魔法がある。お前には物理的な方を教える。」
物理的な魔法?
なんとなくおかしな表現に感じた。
物理的なのに魔法だと言うのだろうか。
「・・・中でもお前に向いてる魔法。空間触覚って魔法。簡単に言うと空間にさわれるようになる魔法だ。何も無いところに触れるようになる。」
和輝の言っていることがいまいちよくわからない。
空間に触る。
この言葉から意味を受け取るのはとても難しく感じられた。
が、そんなことを理解する必要はない。
「・・・・私にそれが出来れば、あんた達を戻せるんだね、・・・わかったよ。」
『あんた達』はもう適切では無かった。
私はもう和輝の事なんて実はどうでも良くなっていた。
むしろ、この2日間で嫌いになりつつすらある位だ。
綾子、私は綾子に惹かれていた。
初めて自分の中に愛情らしきものの存在を感じた。
これを知った今となっては、恭祐に対して抱いた感情は恋ですら無かったのかも知れない。
言うなればあれは私の初体験だろう。
「他人を思いやる殺人鬼か、クク。・・・琴葉、始めるぞ。来い。」
和輝は壁に寄りかかるのをやめて、部屋のドアを開けた。