二章 嫌いな奴は殺すんだ。 10 倒錯
「ごめんなさい、琴葉ちゃん。・・・・・・私達なんかのために。」
私を抱きしめて泣きながら綾子が言う。
綾子は私の中で果てた。
私を魔法使いにするために、綾子は無理をしていたのだろう。
「・・・・・綾子さん、泣かないで。・・・・ありがとう、とても嬉しかった。」
綾子の涙を見て、私はまるで胸を締め付けられるような気持ちだった。
私は無理矢理でなく誰かに抱かれたのは初めてだった。
綾子とのセックスはとても心地良くて、優しい時間だった。
私が痛くないか、辛くないか、確かめながら。
綾子の優しい感情が私だけのものになった感覚。
今まで知らなかった感覚が心の空白を埋めていくようだった。
いつの間にか、私の目からも涙が流れ出ていた。
「・・・・でも、琴葉ちゃん、苦しかっ・・・っ!」
泣きながら必死で謝ろうとしている綾子の唇に私の唇を重ねた。
急に。
優しく。
激しく。
数秒の後、私は唇を離した。
綾子の涙は止まっていた。
「綾子さんは悪くない。私は綾子さんとで良かった。辛くなんて、・・・・苦しくなんて、無かった。」
私は泣きながら言った。
自然と大声で早口になっていた。
意識することなく綾子の体を抱き締めていた。
私はふと思ってしまった。
これが愛情なのではないか。
私は綾子に恋したのではないか。
「・・・琴葉ちゃん。・・・・まだ私と出会って三日目だよ。・・・・本当に、本当に優しいんだね。琴葉ちゃんのそういう所、好きだよ。」
綾子は悲しいような笑顔で私を見つめている。
私の言葉は綾子の為を思った優しさなんてものじゃない。それだけは確かだった。
私は言わずにはいられなかった。
「・・・・もっと、私の事を好きになって欲しい。・・・もっと私を愛して、深い、強く、何度も。」
私は綾子を抱きしめた。
強く、強く。
綾子は小さく震えていた。
「・・・・いけない、駄目だよ。そんな事したらもうきっと、戻れなくなる。」
綾子はためらいながら言う。
私はきっと綾子が言っていることを理解していた。
それでも、綾子の愛が欲しかった。
「いいの、愛して。」
綾子は私の感情を理解したのだろう、そして拒絶しなかった。
私は綾子に抱かれた。
何度も、何度も。
狂おしいくらいにずっと、ずっと。
いや、きっと二人とも狂ったのだろう。
部屋にはベッドの軋む音と私の喘ぎ声だけが響いていた。
「琴葉ちゃん。愛してるよ。」
「綾子さん。愛してる。」